MMD研究所とオークネット総合研究所は共同で、「2020年日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」を実施し、その結果の第1弾が公表されました。じつはこの調査は毎年実施され、筆者もこの動きに注目すると同時にコメントも寄せさせていただいております。
なぜ日米なのかというと、世界の携帯電話サービスを見た際に、通信事業者が端末販売も手掛けるなどのビジネススタイルが日米両国は非常に類似しているため、その差異があるところに色々とビジネス上のヒントが見えてくるからです。
今年の調査は、日本在住の15歳~69歳の男女1,013人とアメリカ在住15歳~69歳の男女1,119人を対象に2020年3月19日~3月20日に実施されました。まず5月21日に公表された第1弾では日米モバイル端末の利用状況を中心に結果が抽出されています。なお、本連載次回はこの調査結果の第2弾に触れる予定ですが、そちらは日米の意識の違いにフォーカスを当てたものになる予定です。
では、調査結果の中から着目しておきたいところをピックアップしていきましょう。
まずは日米のスマートフォン利用率を見てみましょう。日本在住の15歳~69歳の男女(n=1,013)とアメリカ在住15歳~69歳の男女(n=1,119)に対して、現在メイン利用している携帯電話端末を聞いたところ、日本のスマートフォン利用率は87.4%、アメリカのスマートフォン利用率は94.9%となり、その差は7.5ポイントまで縮まってきました。じつはわが国はスマートフォン利用率が先進諸国の中で意外にも低かった国のひとつでした。というよりも、わが国のフィーチャーフォン、すなわちガラケーがスマホに劣らない機能を備えていたために、グローバルなスマホにシフトしていくのに時間が掛かっていたのです。通信キャリア各社が本格的にスマホにシフトしていったのが2010年頃なのですが、約10年かけてようやく9割近くまで普及率を高めたことになります。
2018年の調査ではフィーチャーフォンが17.7%を占めていましたが、2020年の調査では9.4%まで減りました。それでもまだ2018年時点の米国に比べてもスマホ比率が追い付いていないという状況です。
そして本題に入っていきますが、中古端末の購入割合は2016年調査時は1.8%だったところが2020年では6.1%と4.3ポイントアップするところまで伸びました。とはいえ、米国では中古端末の購入割合が10.4%なので、まだもう少し伸びる余地があるということです。相変わらず日本では新品端末を購入する比率が高く(91.0%)、昨秋から分離プランが義務化されたこともあって、今後この比率がどのように変化していくかが注目されるところです。
中古端末は、ユーザーの使用済み端末を市場に流通させる必要があります。ユーザーは端末の処分をどのようにしているのでしょうか。
スマホは高額商品でもあり、下取りや買取に出せばそれなりの価格で引き取ってもらえます。こうした不要端末が市場に出てこなければ、中古端末市場も活性化しません。
じつは、わが国では利用していた端末を自宅に保管したままにしているユーザーがとても多い状況です。2016年以降の推移を見ても、自宅保管の割合はほとんど変わっていません。不要端末は少しでも早く手放したほうが残存価値が高まります。通信事業者の下取りや大手買取店では、ユーザーから引き受けた端末はデータ消去等を責任もって処理してくれますので、安心して端末を手放せます。下取り・買取業界はこの安全性をもっとアピールすることで、自宅に眠る資産を市場に流通させていくきっかけづくりができるのではないでしょうか。
一方、ユーザーは中古端末をどうみているのでしょうか。このあたりは日米でだいぶ考え方が違うことが見えてきます。
中古端末に期待することとして、米国では「購入後すぐに使える」とか「きれいにクリーニングされている」といった項目が上位に並びますが、わが国では「しっかり動作確認されている」に次いで「特に中古端末に期待することはない」が来ています。中古端末のイメージがあまりポジティブに評価されていないのではないでしょうか。中古端末というと、他人が使ったものという印象が拭えないのかもしれません。しかし、外装やアクセサリを新品にしたリファービッシュ品なども中古端末というくくりで市場に流通しています。高価な人気モデルをより安価に入手することもできます。このあたりも中古端末流通業界がその魅力をもっとアピールしていかなくてはならない分野なのでしょう。
中古流通業界も、もう一工夫することで、まだまだ伸びしろのある世界だと感じています。
<出典>
「2020年日本とアメリカにおけるスマートフォン中古端末市場調査」第1弾
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1863.html