新型コロナウイルスは決済方法を変えるのか|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

<図1>支払い方法別の利用変化

私たちの日常を激変させた新型コロナウイルス感染症。これまでの「あたりまえ」が通用しなくなり、感染リスクを最小化するために新たな生活様式までが提案されることとなりました。
仕事のやり方に関しては、日本ではなかなか普及が進まなかったテレワークが一気に定着することとなりましたし、教育分野ではオンライン授業に取り組むところも増えてきました。

こうした変化が起きてきた中で、決済の電子化も一気に進んでいくのではないかと考えていました。たとえば中国では数年前からQRコード決済が当たり前なものとして定着していましたが、こうした電子決済に移行した理由の一つに「現金は汚い」という意識があったからと言われていました。人々の素手を介してやり取りされる現金での支払いは、ともすればウイルスの感染要因につながることも考えられます。
実際にコンビニエンスストアでの現金決済では、店員さんへの現金手渡しは避けて、キャッシュトレーに一度置くという手順が推奨されているほどです。

一方で電子決済であれば、レジなどの機器や店舗従業員に接触することなく決済が可能になります。感染防止の観点からもきっと有効なのだろうと想像できます。

そんな中、MMD研究所はタイムリーに「新型コロナウイルスによる支払い方法の変化に関する調査」を実施し、その結果を公表しました。この調査は株式会社コロプラが提供するスマートフォン向けインターネットリサーチサービス「スマートアンサー」にて共同調査を行ったもので、スマートフォンを利用する18歳~69歳の男女5,530人を対象に2020年4月22日に実施されました。

この調査結果によると、新型コロナウイルス感染症によって約2割の人の支払い方法に変化が見られたということです。「やや変化があった」、「変化があった」をあわせて変化があったと回答したのは20.2%にのぼり、このうち支払い方法に「変化があった」と回答した1,115人に対して、各支払い方法はどのような変化があったか聞きました。
その結果「利用が減った」という回答が最も多かったのは「現金」で73.6%、次いで「交通系電子マネー」が28.5%、「利用が増えた」という回答が最も多かったのは「QRコード式のスマホ決済」で78.9%、次いで「タッチ式のスマホ決済」で65.3%となりました。

すなわち、現金から電子マネーへの利用移行が明らかに増えており、しかもカード型の電子マネーは利用も増えていますが、一方でカード型の電子マネーの利用を減らしたというユーザーもそれなりにいます。カード型のICカードも触りたくないという意識から、QRコード決済に移ったと勘ぐればよいのでしょうか。

<図1>支払い方法別の利用変化
<図1>支払い方法別の利用変化

現金を使わない理由については自由回答で尋ねているようです。一部抜粋の回答が紹介されていますが、やはり感染リスクを減らしたいという声は多そうです。

<図2>現金を使わない理由
<図2>現金を使わない理由

ともあれ、以上の回答は支払い方法に関して「変化があった」と回答した方々の回答で、調査の全体のわずか20.2%(1,115人)から得られた回答にすぎません。というか、こうした社会情勢下でも決済の方法に変化がなかった人たちが79.8%を占めています。この79.8%の方たちは、もちろんすべてが現金決済というわけではなく、もともと電子決済を使っていたので変化がなかったという人たちもいらっしゃるでしょう。

ところが、普段の支払い方法の調査結果を見ると、なんとやはり圧倒的に現金比率が高いことが分かりました。

<図3>普段の支払い方法と直近3ヶ月で利用した支払い方法
<図3>普段の支払い方法と直近3ヶ月で利用した支払い方法

コロナの流行があった直近3ヶ月の利用で多少の減少がみられますが、他の決済方法も同様に減っているので、これは決済方法を見直したのではなく、消費を控えただけということなのでしょう。コロナで決済手段も大きく変わるのかと期待をこめていましたが、やはり現金決済の習慣は簡単に変えられないようです。

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