韓国では運転免許証がアプリに|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

まずはコンビニでの年齢確認の際の身分証明書代わりに活用される(出所:LG)

ICT利活用先進国の一つである韓国にて、なんと運転免許証がアプリに入ったというニュースが飛び込んできました。通信大手3キャリアによる個人認証サービスアプリを活用し、韓国警察庁も公認で運転資格の確認や身分証明書として活用できるようになるそうです。

もともと韓国では通信大手3キャリア(SKテレコム、KT、LGU+の3社)が共同で個人認証アプリ「PASS」を提供していました。すでにこのPASSの利用ユーザーは3,000万人を超えているようで(韓国の総人口は5,164万/2018年)、国民の多くが個人認証アプリとして利用しているということです。

このPASSにアドオンする形で「PASSモバイル運転免許確認サービス」の提供を開始することが6月23日に明らかにされました。韓国ではこれが国内初の公認デジタル身分証明書の商用化事例となるそうで、韓国の規制サンドボックス制度(新しいサービスや製品に対して、実証作業に対する特例と一時的な許可を許容することで、既存の規制を免除したり猶予したりする韓国の制度)を活用して事業推進していくとしています。

韓国の「PASSモバイル運転免許証確認サービス」の画面イメージ(出所:LG)
韓国の「PASSモバイル運転免許証確認サービス」の画面イメージ(出所:LG)

自身のスマホにPASSアプリを登録しているユーザーは、PASSの本人認証(指紋、顔認証、6桁のピン番号等)を行い、そして免許証を撮影することで、スマホ回線の契約者情報との照合を行い(ユーザー本人名義のスマホ1台に、1つのキャリアを介してのみ利用可能)、「PASSモバイル運転免許確認サービス」が利用可能になります。

このアプリ画面上では、運転免許証の写真、認証用のQRコード、バーコードだけが表示され、生年月日、住所などの個人情報の不必要な表示は行われません。認証画面上では常時動くアニメーションを使用し、QRコード、バーコードのキャプチャができないよう工夫をしています。また一定時間が経過すると、バーコードがリセットされることで、不正使用を防止しています。

ブロックチェーン技術も活用し、表示される写真は韓国警察庁運転免許システムに連動させて、警察庁に登録されている実際の運転免許証の写真が表示される仕組みになっています。このため、他人の写真や情報で免許証を偽造・変造することは不可能となっています。

PASSモバイル運転免許確認サービスは、まず全国のCUおよびGS25コンビニエンスストア全店にて、酒類販売時の未成年者確認のための身分証明書として活用されます。また7月からは全国27の運転免許試験場で運転免許証の更新や再発行、国際運転免許証の発行の際に活用できるようにするということです。また交通検問時の本人確認でも利用できるよう検討が進められています。

まずはコンビニでの年齢確認の際の身分証明書代わりに活用される(出所:LG)
まずはコンビニでの年齢確認の際の身分証明書代わりに活用される(出所:LG)

さらにオフラインの他に、ニーズが高まりつつある非対面でのオンラインによる本人確認での利用も想定されています。デジタルであることを活かし、たとえばレンタカーやカーシェアリングサービスを予約する際などの利用も検討されています。

韓国警察庁の関係者は通信3キャリアと今後も継続的にコラボレーションし、技術の補完や改善を通じてサービスのレベルを向上させることを表明し、通信3キャリアも急速に増加している非対面による本人確認のニーズに対し「PASSモバイル運転免許確認サービス」の活用分野を順次拡大させていくとしています。

現時点では、既存の運転免許証とは効力の範囲が同じではありません。通信3キャリアと韓国警察庁とで合意された用途のみで身分証明書として使えるものです。しかし、2021年中を目処にスマホ端末内のセキュアな部分(SIMカードでしょうか?)に暗号化された運転免許証を直接発行する方式を目指し、これによって本来の運転免許証と同等の法的効力を持つものにしていくと構想を打ち出しています。

LG社プレスリリース
http://www.lg.co.kr/media/release/22039

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