自動運転バスが定時運行する境町へ – NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)を体験-|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

自動運転技術が着々と進化を遂げていますが、なんと茨城県境町には自動運転バスが定時運行しています

境町は町役場が5年間で5億2千万円を投じてフランスNavya社製の自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を3台導入し、町民のための生活路線バスとして定時・定路線での運行を2020年11月26日(木)から開始しています。乗車定員11人以上の車両が、一般の方の移動手段として期間を限定せずに大半の区間を自動で走行するのは全国で初めての取組みとなります(BOLDLY株式会社調べ)。
さらに本年7月からはその走行経路を4倍に拡大し、停留所数は16カ所、1日20便が毎日運行しています。

地方での共通の課題として必ず話題になるのが、地域内の移動における交通弱者の移動手段をどう確保するかです。ライドシェアを試みる自治体なども多いですが、境町では自動運転技術でこの課題の解決を試みたのです。

人口約2万4千人の境町は、江戸時代は利根川、江戸川を活用した河川舟運で栄えた、自然環境と豊かな歴史・文化を持つ町です。一方で舟運で栄えていたために鉄道を誘致せず、時代が変わった現代においては「鉄道駅がない」という交通面での大きな弱点を抱える町になってしまいました。
人口減・財政難等の課題を抱えてきましたが、2014年に就任された境町出身の橋本正裕町長のもと、境町を「住み続けられる町」に変革していこうと、財源面の課題を意欲とアイデアで乗り越えながら前進を続けています。

境町へのアクセスですが、2015年3月に圏央道・境古河ICが開通したことで、自動車でのアクセスが格段に向上、さらに2021年7月からは東京八重洲口駅からノンストップで境町まで走る高速バスが運行を開始し、所要1時間20分で結んでいます。

いざ、東京駅八重洲口バスターミナルから境町へ
いざ、東京駅八重洲口バスターミナルから境町へ

境町高速バスターミナルから町中心部までは、なんと自動運転バスで移動可能です。
この高速バスの運行開始に合わせ、自動運転バスの路線も拡張し、日中運行される高速バスに接続するように定時運行しています。

境町高速バスターミナルに到着すると、早速自動運転バス「NAVYA ARMA」がお出迎え
境町高速バスターミナルに到着すると、早速自動運転バス「NAVYA ARMA」がお出迎え

自動運転バスは町民の移動手段として、無料で乗車が可能です。NAVYA ARMAの乗車定員は11人。ただし、自動運転といってもオペレータが1名乗車しますので、お客様の乗車は最大10名となります。
また、新型コロナウイルスの感染防止のため一時最大4名に制限していましたが、10月4日より最大8名として運行しています。

運行時刻など詳細は境町役場のこちらのページで確認できます。
境町役場「自治体初!境町で自動運転バスの定常運行を開始しました」

早速、NAVYA ARMAに乗車してみましょう。なによりハンドルがないことに驚きます。
本来、車内に設置されたタッチパネルから車両の手動操作ができるようなのですが、日本の法令で車検をクリアするためにやむを得ずXboxのコントローラを取り付け、ハンドル代わりとしています。ゲームコントローラでバスを手動走行させるって、なんだかメチャ斬新です(笑)

NAVYA ARMAに乗車!ハンドルがありません!
NAVYA ARMAに乗車!ハンドルがありません!
じつはXboxコントローラで手動時のハンドルやブレーキ操作をします
じつはXboxコントローラで手動時のハンドルやブレーキ操作をします


最高時速は20km/h、のんびりと進みます

 


バス停から出発進行、なんかシュールです

自動運転といっても、現在のところ自動運転レベルでいう「レベル3」(システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要)にとどまっており、完全自動運転に向けて一歩一歩進めているという感じです。
たとえば信号との連動がまだできておらず、このため信号のある交差点通過時はオペレータが確認の上でコントローラで通過の指示を出しています。それでも、昨年の運行開始以降に着実に実績を積み上げ、数多くの規制緩和等を実現させています。

また、こうした自動運転技術による公共交通の運行には、これをオペレーションするバックヤードのシステムが重要になってきます。境町では、自動運転バスの終着停留所であるシンパシーホール近くにオペレーションの事務所を設け、ここで町内を走行している3台のNAVYA ARMAを常時モニタリングしています。
走行中の車内やバス外部の映像を随時チェックでき、また異常が発生した場合など、オペレータと乗客で会話できるようになっています。
オペレーションのシステムは、自動運転バスを技術面で支えるBOLDLY社の「Dispatcher」を使用しています。

自動運転バスの運行を見守るオペレーションルーム
自動運転バスの運行を見守るオペレーションルーム

自動運転技術はドライバーの負担を軽減させるものとして、わが国では2016年1月のテスラ・モデルSへの自動運転機能アップデートを皮切りに、各社の乗用車に徐々に実装されてきました。

しかし、自動運転技術が求められるのは乗用車だけではありません。境町の自動運転バスの運行を技術面でサポートするBOLDLY社はバスなどの公共交通こそ自動運転技術の実装が重要であると考え、これまで各地で実証事業を行ってきました。
人口が減少する地方において、公共交通の維持は大きな課題となっており、赤字路線が次々に廃止に追い込まれています。しかし、自動運転バスの運行が一般化していけば、場合によっては廃止せざるを得なかった路線も低コストで運行が継続できるようになるかもしれません。こうした技術により、地域の衰退に歯止めをかけることを期待したいものです。

なお、境町ではこの自動運転バスは町民の利用を優先としていまして、学術・ビジネス目的での視察につきましては、事前予約制・有償での対応としています。

自動運転バスの視察・研修についてはこちらをご覧ください。
境町観光協会の公式ホームページ|自動運転バス【NAVYA ARMA】

おすすめ記事