地域通貨アプリってじつはメチャお得【せたPay】|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

筆者は昨年、新型コロナウイルス感染拡大で疲弊した青森市内の飲食店を支援しようと、テイクアウトを始めた店舗のポータルサイトを学生と共に作り、情報発信をしたりしていました。その後、自治体が動き出して、プレミアムのついた地域振興券を発行するなどして地域の人たちが地域の飲食店等にお金を廻す取組みへと広がっていきました。

こうした地域で利用できる商品券等ですが、それが「紙」という時点で使い勝手が悪く、そもそも印刷自体で無駄な経費が掛かっていると思いませんか?(地域の印刷会社を助けるという意味もあるのでしょうが)

この地域で使える地域通貨をアプリに切り替えた自治体が出てきています。
東京では、世田谷区で「せたがやPay」(略称:せたPay)がすっかり定着してきたようです。

せたPayアプリトップ画面
せたPayアプリトップ画面
使い方は他のキャッシュレス決済同様にアプリからQRコードを読んで支払金額を入力します
使い方は他のキャッシュレス決済同様にアプリからQRコードを読んで支払金額を入力します

「せたPay」は、世田谷区商店街振興組合連合会が運営主体となって2021年2月20日にサービスを開始した、世田谷区内の加盟店舗で利用可能なキャッシュレス決済です。利用できる店舗は世田谷区内の商店、飲食店、コンビニ、クリニックやサロンなどで、対応店は順次増加中です。

世の中にはSuicaやPayPayなど全国で利用可能な電子マネーやキャッシュレス決済があるのに、なんでわざわざこのようなローカルなサービスを利用する必要があるのでしょう。じつは自治体が地域の商店等を支援するためにキャンペーンを展開することがあり、これが利用者にとってじつにお得だからなのです。

「せたPay」の直近のキャンペーンでは、2022年1月31日まで、チャージするだけで10%のポイントが付与される「生活応援キャンペーン」を実施中です。最大上限額が20万円となっていますが、20万円で22万円分の支払いができてしまうのです。
(ただし「せたPay」自体の上限コイン金額が10万円ですので、チャージと支払を繰り返した上でのキャンペーン上限額が20万円ということになります)

同様に「地元のお店応援キャンペーン」として、「せたPay」で支払いをすると20%のポイントが還元されるキャンペーンも展開しています。
使い方によりますが、「生活応援キャンペーン」と合わせて、なんと合計30%も還元されるなんて、メチャお得だと思いませんか?

こうした地域通貨の電子化ですが、利用する側も、店舗側もメリットはたくさんあります。
利用する側からすると、従来の紙ベースの商品券は自治体が指定した発売開始日に指定場所まで買いに行く必要がありました。しかしアプリならダウンロードしてすぐに使えます(ただし、「せたPay」のチャージはセブンイレブンATMしか対応しておらずセブンイレブン等へ足を運ぶ必要があります)。
商店側も、従来の紙ベースの商品券は指定の金融機関に持ち込んで換金する必要がありました。日中の営業時間中は忙しく、換金に行けないなどの声も多かったと聞きます。しかし、「せたPay」アプリで電子化されてからは、商店の銀行口座へ自動的に振り込まれます。商店側も負担軽減になっているわけです。

一方、自治体側も必要な時に予算に応じて地域の商店へ支援ができるプラットフォームになっています。お気づきと思いますが、前述のポイント還元の原資は世田谷区が支出しているものです。区の財政を見ながら予算に応じてキャンペーンを打っているのです。
なお、世田谷区が地域のために補助金を投じているものとなりますが、「せたPay」は世田谷区民以外でも使えます。結局のところ利用可能な店舗は世田谷区内のみ(一部区外で利用できるところもありますが)なので、最終的には世田谷区の商店にお金が廻ることになります。区外にお住まいでも、世田谷区内によく行き来されている方は、このお得なキャンペーンに便乗できるのです。

地元の方のお話では、たとえばお子さんに毎月のお小遣いを「せたPay」であげているというご家庭もあるのだとか。ポイント還元分お小遣いが増えて大好評だとか。

ちなみにせたPayのシステムは、株式会社フィノバレーのデジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」を利用しています。同様な地域通貨は岐阜県飛騨・高山、千葉県木更津市、長崎県南島原市などでも採用されています。筆者がこれまで住んでいた自治体では紙ベースの地域商品券等しか見たことがありませんでしたが、地域通貨のDX化は住民にも商店主にも、そして自治体自体も便利になるはずです。大いに採用するべきと思います。

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