NTTドコモ モバイル社会研究所は10月28日に、今後利用してみたい次世代サービスの調査結果を公表しました。調査自体は2021年2月に実施した「2021年次世代ライフスタイル調査」で、関連する部分の分析結果がこれまでたびたび小出しされているものです。
今回はこの調査から、次世代のサービス利用意向に関する内容を抽出し、分析しています。
早速、その結果を見ていきたいのですが、今後利用してみたいサービスの1位は「自動運転」で34,4%。これはテクノロジーへの関心が高いということでしょうか。自動運転技術は急速に話題として拡がりを見せているものの、まだまだ身近に体験できるものではありません。
一方で、2位に輝いたのは、「オンライン診療・遠隔手術・見守りサービス」で29.3%でした。コロナ禍でオンライン診療への関心が非常に高まり、その結果を反映しているのでしょうか。
実際に、オンライン診療をめぐるサービスはこの1年半で大きく拡がりを見せましたし、自動運転に比べればよほど身近なサービスと言えそうです。
そしてこの「オンライン診療・遠隔手術・見守りサービス」の利用意向について、性年代別に掘り下げたところ、若年層よりもシニア層での利用意向が高いことも分かりました。
10代では男女ともに2割程度の利用意向ですが、20~60代まで男女ともに3割程度の利用意向がありました。そして70代男性は4割以上の方が「オンライン診療・遠隔手術・見守りサービス」を利用したいと回答しています。
さらに都道府県別で見ていくと、大分県が41.1%、香川県が38.5%、青森県が37.5%、福島県37.2%、滋賀県37.1%と高い傾向が見られました。
次世代サービスという切り口からの調査分析ですが、オンライン診療への関心がこれほど高いということは、やはり生活の身近なところでの情報通信技術のさらなる活用が期待されているということと言えるでしょう。さらに、こうした技術が効果的なのが、シニア向けだったり、大都市部よりも地方で求められているということなのです。
筆者は今春まで8年間に渡って青森県に在住する機会がありましたが、地方の現実に触れて学んだことはたくさんありました。東京において机上だけで考えていては気づかない、地域ならではの課題を目の当たりにできました。
ちなみに青森県は日本一の短命県で、あらゆる病気の死亡率でもワースト1位が並びます。これには色々な要因が複雑に絡んでいると思いますが、医療機関へのアクセスの不便さも大きな要因ではないかと考えていました。気軽に病院に足を運べないから、多少調子が悪くても我慢してしまう傾向もあるように感じました。
こうした地域こそ、スマホから手軽に医療にアクセスできたら、救われる人も多いはずです。スマホで診療なんてありえないと言われることもありますが、まずは「気軽に健康状態について相談できる」(オンライン健康医療相談)ところが第一歩だと思います。そこから必要に応じてオンライン診療に移行し、さらに治療や処置が必要であれば適切な医療機関につなげば良いのです。
この調査結果でオンライン診療の利用意向が高いエリアは、青森県を含め、どこもやはり地方ではないですか。そうしたところで、オンライン診療は生きてくるのです。また、シニアにとってもニーズは高くて当然でしょう。
じつは「スマホで医療」というのは、すでに世界では拡がりを見せています。日本でも技術的には導入は可能だったわけですが、なかなか制度として整ってきませんでした。
個人的な見解ではありますが、厚生労働省はどちらかというと前向きながら、日本医師会などが慎重姿勢でした。医師会というと、いわゆる開業医の団体です。日本医師会側の見解を聞いていると、オンライン診療では地元のかかりつけ医を飛ばして大都市圏の大手事業者(の契約医など)に患者を取られてしまうという考え方があるようでした。
筆者としては、医療サービスは利用者側である患者視点でサービスを設計していくべきだと考えています。医師会側の言い分は、医療を提供する側の視点が語られてしまいます。必ずしも、オンライン診療で患者を大都市圏に取られてしまうなど、実際に運用してみればそんなことは起きないと思います。
むしろ、地方の開業医の方々も積極的に医療体制の情報化を進め、地域の患者さん向けにオンライン対応を進めていくべきではないかと考えます。
出典
NTTドコモ モバイル社会研究所:今後利用してみたいサービス 「オンライン診療・遠隔手術・見守りサービス」約3割:70代男性は4割以上が利用したい
https://www.moba-ken.jp/project/others/lifestyle20211028.html