スマホライトユーザー獲得に向けた料金攻防|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

1月29日の記者会見でお披露目された楽天モバイルの新料金プラン

前回大手3キャリアの新料金プランについて解説させていただきましたが、大手3キャリアの打ち出したデータ通信容量20GBの2,980円というプランは、じつはヘビーユーザーにとっては容量不足であり、一方でライトユーザーにはまだ高い価格設定であるということを論じました。

※前回の記事はこちら。

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じつは各所でそんなことを論評していたところ、エイチーム引越し侍が運営する『Soldi』という通信サービス比較サイトから記事監修の依頼が舞い込んできました。一体、何の記事?と思ったら、なんと主要な格安SIM・21社を徹底比較する企画だそうです。何とも旬な話題なので、早速お引き受けしました。

この記事のために色々と調べていくと、今やMVNOは再販的な事業者も含めてですが1,000社を超えているのだとか。そうした中で、このSoldiの記事では大手3キャリア以外を「格安SIM」という括りにして、楽天モバイルや、大手のサブブランドであるY!mobile、UQ mobieも含めて横串で比較していこうという、引き受けたものの極めて重いお仕事となりました。ご参考までに、以下の記事になります。

<参考記事>
【神・保存版】格安SIM21社を徹底比較!自分に合ったプランがまる分かり! – インターネット・格安SIMのソルディ
https://www.soldi.jp/articles/kakuyasu_sim_comparison/

大手3キャリアの打ち出した2,980円のプランは、言ってみればヘビーユーザーでもなくライトユーザーでもなく、ちょうどその中間ぐらいの見事な位置づけに据えられたプランになります。一方で、わが国のスマホユーザーの大半は、ライトユーザーに当たるのではないかと見ています。したがって、今後の格安系事業者の料金プラン激戦区は20GB以下のライトユーザー向けプランをどう魅力的に打ち出すかにかかってくるはずです。

格安系各社の料金プランを見ていくと、多くは3GB、6GB、12GBあたりの区切りで料金を設定し、それに加えて音声通話に関連するオプション(例えば「10分以内の通話が定額」など)を用意しているものがほとんどでした。他社と差別化を図るためには、この3区切りの料金自体を他の主要MVNOより数十円安くしてみたり、逆に料金は横並びのままデータ量を1~2GB程度増量してみたりといったところで、ユーザーから目を引くような工夫をしているところがありました。

ちなみに、この記事を監修していたのが1月下旬の話なのですが、記事入稿を完了したところで、3キャリアの新料金プランに対抗するためのMVNO等の動きが続々と出てきてしまいました(ということで、記事自体は随時アップデートが続くことに)。大きいところでは、1月27日にmineoが料金プラン全面リニューアルを公表、2月1日から受付を開始しています。mineoの場合は、従来10GBで3,130~3,570円だったものが新プランでは1,780円に、6GBで2,190~2,630円だったものが1GB容量を減らして5GBとしたうえで1,380円へと大幅値下げです。これはどう見ても、大手3キャリアの2,980円プランに対抗できない価格だったからでしょう。

mineoが発表した新料金プラン。MVNOとしての苦労が垣間見られますが、MVNOはライトユーザー向けにどうサービスを手厚くするかが勝負になっていく感じですね
mineoが発表した新料金プラン。MVNOとしての苦労が垣間見られますが、MVNOはライトユーザー向けにどうサービスを手厚くするかが勝負になっていく感じですね

さらに1月29日には楽天モバイルも新料金プランを発表しました。楽天モバイルは大手3キャリアと同様にMNOに位置づけされますが、後発だけにインターネット技術を有効に活用し従来のキャリアに比べてコストを徹底的に抑えるなどすることで、この身軽さを活かして料金面で対抗していこうという意気込みを感じます。その楽天モバイルの料金プランですが、もともと2,980円でデータ容量無制限(ただし楽天回線エリアに限る)というものでしたので、大手3キャリアの新料金プランとも引けを取らないものでした。

しかし今回、楽天モバイルもライトユーザーに向けた工夫を凝らしてきた感じで、なんと1GBまでの利用なら0円、3GBまでなら980円、20GBまでなら1,980円、それ以上無制限で2,980円という価格設定となりました。

1月29日の記者会見でお披露目された楽天モバイルの新料金プラン
1月29日の記者会見でお披露目された楽天モバイルの新料金プラン

この楽天モバイルの記者会見をオンラインで視聴していたのですが、楽天モバイル会長兼CEO・三木谷浩史氏は、大手3キャリアの新料金プランがオンライン限定受付であることに関して「ネットを使える人は安くて、店頭に行くと高いというのはおかしい。むしろこれは逆デジタルデバイドではないか。ワンプランで平等に同じ値段を提供する」として、楽天モバイルの店頭でも受け付けられることを強調していました。シニアなど、本当に利用量が少ないユーザーで0円などのユーザーであっても、「スマホの利便性に気づいてくれて、便利だと感じたらデータ通信の利用はいずれ増えていく」というコメントも。

確かに、本当にこの10年ほどでスマホの利便性は確実に向上していますし、通信速度も格段に向上し、高速大容量通信が当たり前になっているわけです。おそらく10年前の1GBと現代の1GBでは圧倒的に価値が違っています。今後は5Gの普及で、ますます1GBの価値が下がっていくはずです。だからこそ、定期的に通信料金の見直しは行われるべきであり、時代に見合ったデータ通信料金が求められていくべきです。

通信料金への政府介入の賛否や、MVNOの事業圧迫になるなど、色々な意見は聞こえてきますが、MVNOも真剣に生き残りをかけてサービス内容や料金価格設定に工夫を凝らしてきています。筆者としては、各社よい刺激を受けて、いい形で競争が起きてきているんじゃないかと見ています。

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