おうちの近くにスマホ教室がやって来るMaaS|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

かつては「シニアがスマホを使いこなせないからやむを得ずガラケーで」という考え方もありましたが、昨今はもはや「社会インフラとなったスマホをシニアにも活用してもらうべき」という流れに変わってきました。

確かに一昔前は、ガラケーに対してスマホは端末も利用料も高価というイメージがありましたが、もはや機種を問わなければ激安のスマホ端末もありますし、MVNOを使えばわずかな利用料金でスマホを所持運用することが可能になりました。マイナンバーのオンライン活用を含め、自治体等の各種サービスを利用するにもスマホを使っていただいたほうがはるかに便利な社会生活が送れるわけです。

こうした社会変化の流れの中で、自治体主導でシニア向けのスマホ教室が各地で開催されるようになりました。これらスマホ教室は各キャリアが協力し、キャリアショップなどで開催されるものもあれば、地域の公民館などに講師がやってきて開催されるケースもあります。

しかし、シニアは意外にも地方の中山間部で暮らされている方も少なくなく、シニアがスマホ教室の開催場所に集まることが自体が困難という課題もありました。そこでこうした地に住まわれるシニアのデジタルデバイド解消に向けて、ソフトバンクはMONET Technologies(以下、MONET)の協力の下で、スマホ教室の開催やスマホの利用料金に関する相談、情報変更などの手続きが可能な移動車両「スマホなんでもサポート号」を用意し、自治体の要請に応じて各所を巡回するサービスの提供を2022年4月中旬から開始しています。

スマホなんでもサポート号
スマホなんでもサポート号

MONETはこれまで「MaaS」の普及に力を注いできました。MaaS(Mobility as a Service)は、国では「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるもの」と定義しています。

Maasというと一般的には「人の移動」をスムーズに行う仕組みのイメージが強いですが、MONETは人の移動はもちろんのこと、「サービスの移動」という観点から地方における課題解決に取り組んでいます。

以前、こちらのコラムで長野県伊那市が取り組んでいる、走る遠隔医療診察室をご紹介しましたが、これがまさに「サービスの移動」の模範事例で、その後医療MaaSとして各地へ拡がりを見せるようになりました。医療だけでなく、たとえば「走る市役所」など、中山間部では自治体サービスの一環としてこれらが住まいの近くに“やって来る”サービスが新たなMaaSの概念として注目されているのです。

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今回ご紹介する「スマホなんでもサポート号」は、MONETが開発した車内のレイアウトを柔軟に変更してさまざまな用途で利用可能な「マルチタスク車両」と、その車両を利用した移動サービスに関するMONETのMaaSに関する知見を活かして企画されたものです。自治体が決める開催日程・場所に合わせてこの車両が全国各地を巡回し、ケータイ販売店などが無い地域でスマホ教室が展開されます。

「スマホなんでもサポート号」にはサポートスタッフが常駐し、ここにシニアに乗車、着席いただいて、モニターやタブレットを通じてオンライン経由でスマホアドバイザーとコミュニケーションを取りながらスマホの使い方について学びます。

「スマホなんでもサポート号」車内でオンラインを通じてスマホを学びます
「スマホなんでもサポート号」車内でオンラインを通じてスマホを学びます

4月中旬以降順次、北海道から九州まで全国10地域の13自治体での移動スマホ教室の開催が決まっており、その後も各地に展開されていくようです。

ちなみに筆者もかつて青森県内で筆者が指導していた大学生と共に独自にシニア向けのスマホ教室を展開したこともありました。その際のカリキュラムは、まずLINEの使い方から。

まずは一緒に受講されるシニア同士でLINEのスタンプのやり取りをしてもらいます。LINEはスタンプでも十分に意思疎通が楽しくできるわけですが、それに慣れてくると「どうやって文字を入力するの?」という次の欲求が出てきます。そうして次にシニアの皆さんにはフリック入力を覚えていただきました。ご自身で目的意識を持っていただくと、その先の操作方法はしっかり身につくものです。

さらにGoogle Mapの使い方を教えると、行きたい場所への経路検索や、ストリートビューを使用したバーチャル観光も楽しまれ、こうしてスマホの便利さに惹かれていきました。別の地域でシニア向けにスマホを教えているという知人は、一番最初に「Flightradar24」(飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイム表示するアプリ)を紹介すると、リアルタイムに飛んでいる飛行機の場所や行き先が一目瞭然でシニアから大人気だったという話も聞きました。

シニアから評判が良かったGoogle Mapを使った弘前城バーチャル探訪と(左)とFlightradar24での上空の航空機検索(中、右)
シニアから評判が良かったGoogle Mapを使った弘前城バーチャル探訪と(左)とFlightradar24での上空の航空機検索(中、右)

いずれにしても、「スマホは便利」「スマホは面白い」と思ってもらえれば、スマホへの乗り換えも進むでしょう。そうしたきっかけというか、接点が増えていくことが重要といえましょう。

(出典)
ソフトバンク:移動型スマホ教室のための車両 「スマホなんでもサポート号」の運用を全国で開始 ~全国の自治体と連携して地域のデジタルデバイドの解消を図る~
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2022/20220404_01/

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