クルマがロボットに変身したりとか、形状が変わって別の用途になるモノにそそられますよね。たとえば筆者はドローン技術の将来展望に色々な期待をもっていまして、その世界でいえば現在世界各地で空飛ぶクルマの実用化に向けた試作開発や法令整備なんかが進んでいるわけです。
わが国でも空飛ぶクルマの開発に取り組んでいる企業がありますが、たとえばスロバキアのKlein Visionは開発中の空陸両用車「AirCar」で、さる6月28日にニトラ空港からブラチスラヴァ空港まで約35分間のフライトを行うだけでなく、その後、翼を格納してクルマにトランスフォームし、空港から道路に出て市街地まで走行するという映像を公開しました。
Klein Visionの「AirCar」、空を飛んでトランスフォームして市街地走行までを映像に
ボタンを押せば約3分で飛行機からクルマにトランスフォームできるのだとか。自動車用ナンバープレートもついてて、これで街中を走っている風景は非常にシュールです。
当然、こうした機材は空には空の、陸には陸の法制度がありますから、それに合致して認証を受ける必要がありましょう。
そんな海外のトピックに驚いていたところ、わが国でも車両区分を変化させるトランスフォームネタが飛び込んできました! 和歌山県に本社を置くハードモビリテイベンチャーのglafitは、自転車にも電動バイクにもなるハイブリッドバイク「GFR-02」を開発し話題になっていたのですが、なんと7月1日に警察庁から通達が発出され、このハイブリッドバイクが公式に求められたというのです。
このハイブリッドバイク「GFR-02」なのですが、原付第一種として道路運送車両法に合致する保安部品を完備した「自転車」と「バイク」を掛け合わせた、 100%電動のハイブリッドバイクです。自転車モードでは自転車と同様にペダルを漕いで走行することができます。
一方、バイクモードではスロットルを廻すだけで走行できます。コンパクトに折りたたみが可能で、車のトランクに載せたり、電車などでの輪行も可能ということです。
ところが、ナンバープレートもついた原動機付自転車という扱いですので、電源を切って押して歩く分には歩道も移動できますが、ペダル走行は原動機を作動させていなくても原動機付自転車になってしまい、このため足で漕いでいても車道を走行しなくてはならず、しかもヘルメットの着用も必要となっていました。
(参考)「ペダル付きの原動機付自転車」の取扱いについて(平成17年3月警察庁交通局)
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku44/pedal.pdf
足で漕ぐのに車道を走行しなければならないというのは、むしろ危険を感じますよね。そこで、glafitは何とかして車両区分を自転車にも柔軟に変更できる方法はないか工夫を続けたようです。
glafitは内閣官房日本経済再生総合事務局(現・成長戦略会議事務局。規制のサンドボックス制度 政府一元窓口)のサポートを受けて和歌山市と、規制のサンドボックス制度に共同申請し、この認定に基づいて2019年11月から行ってきた実証実験を経て、「モビチェン」なる機構を自社開発したといいます。この「モビチェン」がこのほど警察庁での最終確認を経て、車両区分の切替え第1号案件として、7月1日の通達に至ったそうです。
それでは、原動機付自転車から普通自転車へと、どうトランスフォームするのでしょうか。それは…、なんとナンバープレートを電動のカバーで隠すという、これまたシュールなトランスフォームでした。
ペダル付き電動電動バイクであるGFRシリーズは、「モビチェン」機構の取り付けと、このほどの通達によって、普通自転車にチェンジする乗り物となりました。もちろん、確実に電源がOFFになっており、それが一目で確認できるようにナンバープレートを隠すという、これはこれで重要なトランスフォーメーションといえましょう。
じつは先月のこのコラムでも書きましたが、筆者は電動キックボードの行方に関心を持っております。個人的に電動キックボードを所持していますが、まさに第一種原動機付自転車で登録されています。したがってヘルメットは必須で、車道走行しなくてはなりません。これが現在実証実験が行われている小型特殊車両になれば、最高速度の制限がありますがヘルメット不要で一部走行区分も変わります。電源オフにして足蹴り走行で歩道を走れたらそれも便利。そういう意味では、このglafitのナンバープレート隠し機構「モビチェン」の部分だけ別売されるといいなと期待しております。
glafit プレスリリース
https://glafit.com/news/pr20210702/