MRを使って斬新な観光体験│木暮祐一のぶらり携帯散歩道

京都最古の禅寺として知られる建仁寺、1202年に将軍源頼家が寺域を寄進し栄西禅師を開山として宋国百丈山を模して建立したと伝えられています。この800年以上の長い歴史を刻む建仁寺ですが、ここに来る観光客の目的は、誰しもが教科書でみたことのある国宝「風神雷神図屏風」を見学するためでしょう。江戸時代初期の画家・俵屋宗達が描いた神々しい金の屏風に、風神と雷神が力強くポーズを決めている有名な金屏風です。

国宝とはいえ、あまり芸術的センスのない私が見たら、「ふーん、なるほど」で終わってしまうかもしれません。左側に雷神、右側に風神が配置されて、中央は何やら“間”があるのですが、きっと深くも考えないことでしょう。しかし、こうした芸術作品には様々な背景や世界観があって誕生しているに違いありません。それらを現実にあるこの屏風にかぶせて、MR(Mixed Reality=複合現実)コンテンツとして楽しめるトライアルが行われました。マイクロソフトのMRデバイス「Microsoft HoloLens」を使い、実際の風神雷神図屏風(複製)を前にしてHoloLensにコンテンツを重ねて投影し、風神雷神図屏風の世界観を表現した約10分間のMRコンテンツを視聴できるというものです。

日本マイクロソフトと同社の「Microsoft Mixed Realityパートナープログラム」に参加する博報堂が「京都Mixed Realityプロジェクト」として取り組み2017年7月に発表、2018年2月には建仁寺、および京都国立博物館でこの一般に公開しました。文化財の新たな鑑賞スタイルや文化教育、観光モデルの実現を目指したもので、歴史的な文化財とMRを組み合わせているケースは世界初となるそうです。

Microsoft HoloLens 現実空間にバーチャルな情報を重ねられる
Microsoft HoloLens 現実空間にバーチャルな情報を重ねられる

風神雷神図屏風を前にしてHoloLensをかけると、まずは建仁寺の僧侶・浅野俊道氏がそこに現れ、この金屏風について語り始めます。その後風神と雷神が3Dで浮かび上がり、目の前で雨を降らせ雷を鳴らします。約10分間のコンテンツで、この金屏風に込められた五穀豊穣の願いを部屋いっぱいに広がる動画で表現し、まさに前身で「芸術を体験」できるようになっているそうです。

金屏風を前にMR体験の様子
金屏風を前にMR体験の様子

MR活用のポイントはまさにこうした「体験」にあります。現実世界に3Dで仮想空間を表現できるため、その没入感とともに仮想のものが現実と重なって体験でき、これがとても斬新な経験を味わえます。MRによってその時代に自分がタイムスリップしたような体験を得られ、これは史跡めぐりなどの観光分野で新たなイノベーションを巻き起こしそうです。博報堂によれば、MRを今後教育現場に活用することも視野にいれており、「体験」をベースにした学習づくりなんてことも期待できるのかもしれません。

参考情報

参考URL
https://hakuhodo-vrar.jp/kyoto2018/

※出展:博報堂プレスリリース
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2018/02/20180221.pdf

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