今年の冬は強烈な寒波が日本を襲いましたね。連日、北陸方面の豪雪がニュースで流れていたばかりでなく、東京でも歴史的寒さとかで48年ぶりに氷点下4度まで冷え込んで交通網が大混乱したそうですが、皆さんは大丈夫でしたか?!
今冬はそれほど話題になりませんでしたが、筆者が暮らす青森は、まあ例年のごとくの積雪量でした。筆者の勤める大学周辺は常に1mを超す積雪の上に、毎日数十センチの降雪といった感じ。そんな豪雪に毎年見舞われている青森県などの豪雪地帯で生活が営めるのは、自治体等による日々の除雪活動のおかげなのです。ただ、そうした除雪にかかる諸経費はバカになりません。青森市の場合でも最新データ(平成28年)で年間25.3億円もの費用が除雪にかけられています。
青森中心部の除雪風景。夜遅くにこんな感じでブルドーザーが雪を寄せ、さらにダンプ等に雪を載せて雪捨場(海など)まで運びます
こうした除雪作業を行うには国土交通省の定めた「除雪機械運転員資格基準」をクリアすることが条件になります。さらには除雪車の種類によっては運転経験やしかるべき運転免許も必要になります。長年の経験を必要とする作業になりますが、近年は作業者の高齢化も進んでおり、後継者育成を含め課題が山積です。そんな中で、もし除雪作業の自動化が可能になったら、どれほど雪国の生活が楽になることでしょう。
そんな夢のような除雪作業の自動運転化に向けた取り組みが各地で始まっているようです。除雪作業を行うにしても、障害物が少なく、自動化を図りやすい道路として高速道路が挙げられます。NEXCO東日本北海道支社ではそうした実証実験を始めています。センチメートル級の精度で位置情報を取得できる国産の位置情報衛星「みちびき」が4機体制となり24時間利活用が可能になったことを機に、みちびき対応の高精度測位端末AQLOCを装備したロータリー除雪車1台を、道央自動車道の岩見沢インターチェンジに隣接する車両基地に配備しました。さる2月5日には、この除雪車を用いた「準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システムの公開実演」を岩見沢インターチェンジの管理事務所敷地内で開催しています。
このシステムは、除雪車の通行位置やガードレールからの距離、走行車線のはみ出しやガードレール衝突回避の車体修正角度といった情報をモニターを通じて提供し、運転をアシストします。これにより雪が降りすぎて前方や目印となる白線等が見えなくても正確な位置情報を元に除雪作業を進められるというものです。この実証実験ではガイドラインとなる白線が雪で全く見えないというシチュエーションで時速5km程度の低速走行で行われました。モニターにはガイダンスが表示され、結果的に目標ライン内での除雪に成功しました。除雪車オペレーターは「10年分の経験値を備えているシステム」と高評価で、これまでの除雪車の課題を解決してくれる期待が高まります。
NEXCO東日本では現在運転者と助手の2人体制から将来的には運転手1人体制へ、最終的には完全な自動化を目指しているそうです。完全自動運転化はまだまだ先の話ではありますが、青森をはじめとして豪雪地帯においてIoTを用いていかに雪対策を行っていくかの取り組み事例として、大いに期待されています。