モバイルネットワーク進化の鍵となるVoLTEの導入|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

いよいよ夏のボーナスシーズン到来、じつはケータイキャリア各社は、こうしたボーナス商戦を見込んで、このタイミングに最新製品の発表会を繰り広げてきました。今年はやや異変があり、ソフトバンクモバイルが「今後は新製品については準備が整ったものから適宜リリースすることにして、 2014年夏商戦に向けた発表会は行わない」と宣言。結局、 KDDIとNTT ドコモの 2キャリアが例年どおり、盛大な発表会を行うにとどまりました。

すでに多数の新製品が話題になっているところですが、筆者が一番関心を持ったのは、 NTTドコモが今夏から提供開始するという VoLTE(=Voice over LTE 、VoIPのスマホ &LTE版、「ボルテ」などと呼ばれています)。他の報道を見ていると、「 LTE網を使った新しい音声通話サービス」とか「音質が良くなる」というような記事は多数見かけましたが、いよいよ VoLTEが始まること自体の重大さがあまり伝わっていないような気がします。

NTTドコモの夏モデル発表会
NTTドコモの夏モデル発表会

VoLTEとはそもそもなぜ必要か

先駆けて NTTドコモは4 月10日に、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表しました。わが国の電話サービス史上、音声通話は従量課金が当たり前だったというところに、通信キャリア自ら音声通話定額を始めるということは驚くべきことなのです。これまで利用されてきた音声通話サービスは回線交換方式といい、通話をする 1対1 のユーザーが電話回線を占有しますので、従量課金は当然のこと。その後、インターネットの普及と共に、音声データをパケットに乗せてやり取りする IP電話(VoIP )が広まり、これを使えばより安価に通話ができたり、サービスによっては無料で通話も可能となりました。とはいえ、ブロードバンド網経由では、ネットワークの混雑度合いによっては音声品質に影響が出ます。ケータイ網においては、 3G(第3 世代)ネットワークでは通信速度が不十分でしたのであまり音声通話アプリの利用が多くありませんでしたが、 LTEネットワークを使えば固定ブロードバンド並みの通信速度を利用できますので、近年はスマートフォンを利用した無料通話アプリが激増していきました。

とはいえ、やはり確実な通話品質を確保するには、回線交換方式の音声通話が欠かせなかったわけです。そうした背景があった中で、 NTTドコモは音声通話が基本使用料に含まれる音声定額プランを発表…。じつは筆者はこの発表があった時点で、 VoLTEの本格的な運用が近々始まることを感じていたのですが、その予想が見事的中というわけです。

4G(第4 世代)ネットワークといわれている LTEは、じつはすべてのデータ通信をパケット網経由で行っていて、回線交換網は持っていません。音声通話をする場合は、一旦 3Gに切り替えてから通話接続します(多くのスマホでは音声通話をするとアンテナマーク近くの LTE表示が消えたり3Gになったりするはずです)。したがって、これまでは LTE網と3G 網を並存させておく必要がありました。

周波数帯域というのは、総務省から各通信キャリアに割り当てられた範囲でしか利用できませんから、その限られた周波数資源の中で LTEと3G の帯域配分をサービス利用動向を考慮しながら、各キャリアともにネットワークの拡充を図ってきたのです。昨秋あたり、盛んに LTEエリアの充実ばかりをうたう CMをよく見かけましたが、その一方で各キャリアは 3Gで使用している周波数帯域のすべてを LTEに簡単に置き換えられないジレンマもあったはずです。とくに NTTドコモは、フィーチャーフォン比率が高い地方部で音声通話をメインに利用するユーザーが多かったために、簡単に周波数帯域を LTEに移行できない悩みを抱えていたことでしょう。

そうした状況の中でカケホーダイプランを出してきた NTTドコモは、今後本格的に音声通話の VoLTE化を進めていくということの宣言です。 VoLTEは、回線交換網を持たない LTEネットワークのみで音声通話を実現させる技術です。 IP電話のLTE ネットワーク版とも言えますが、通話用パケット帯域を専用に確保するので音声通話品質も保証されます。 NTTドコモの会見では、従来の音声通話よりも高音質であることがアピールされていました。回線交換網が不要になるので、じつは通信キャリアとしても設備投資費や運用費が軽減されますし、なにより複数のユーザーが同時にネットワークを利用できるようになるわけですから、通話料を定額化しても決して損はしない勘定になっているのでしょう。

通話がすべて VoLTEに置き換わることで次のネットワーク世代へと移行が可能になる。
通話がすべて VoLTEに置き換わることで次のネットワーク世代へと移行が可能になる。

VoLTE化の必然性、その先にあるものは

この VoLTEへの移行は、わが国だけの話ではありません。すでに LTEを採用している各国で同様に VoLTEへの移行を模索しているところです。というのは、モバイル通信ネットワークはおよそ 20年のサイクルで新方式のネットワークにバトンタッチしていきます。

NTTドコモの場合ですと、1979年にアナログ方式自動車電話サービスの提供を開始( 1G、第1 世代。それ以降、アナログ方式の中でも仕様変更はあったのですがこれらをまとめて 1Gとしましょう)、1993年 3月にはより周波数効率が良くデータ通信ものちに可能になるデジタル方式( 2G、第2 世代、 PDC方式など)がスタート。その後、アナログ方式のユーザーを順次デジタル方式に移行させた後、 1999年3 月にはアナログ方式がサービス終了。このアナログ方式が使っていた周波数帯域を利用し、 2001年10 月には W-CDMA方式(3G 、第3世代)をスタートさせました。そして 2010年末にはLTE 方式(サービス名では「 Xi」、現在は4G とされている)がスタートし、 2012年3 月には 2Gであったムーバがサービス終了になりました。その間、その後も周波数帯域の再割り当てなどを経て、各通信キャリアが最新 LTEのネットワークを新たに構築しつつ、現在も 3Gと4G (LTE)のネットワークが同時に運用されているという状況になります。

各通信キャリアとしては、より優れたモバイルネットワークとサービスを提供するためには、古いネットワークを早く終了させ、より新しいネットワークへと移行を図って行きたいわけです。次に廃止させたいネットワークがまさに FOMAなどの3G サービスです。しかし、これを廃止させるには、回線交換網を持たない LTE上で高品質な音声通話を実現させることが必須課題だったわけです。 LTEの通信速度になれば、音声もパケットに乗せてデータ通信にしても十分な品質を確保できるものとなったわけで、 LTE上で音声通話を行うVoLTEの仕様が策定され、これがいよいよ今夏からサービス提供に入ることになるのです。

もちろん、 VoLTEを利用するには対応した専用端末が必要です。ネットワークと端末は常に進化の歩みを共にしているわけですね。したがって、今後登場してくる新機種に順次ユーザーが移行し、 3Gネットワークが不要になった時点で、ようやく 3Gを廃止することができるのです。ではその時期はいつなのか? およそ20 年でサービスが終了してきている過去の経緯と、 3Gが開始されたのが2001年ということを考えると、やはり 2020年前後には完全にVoLTEへの移行を済ませ、 3Gを廃止させるということになるのでしょう。

2020年には東京オリンピックが開催され、世界のモバイルユーザーが来日してネットワークを利用することを考えると、 2020年以前に3G を廃止してしまうのはちょっと無謀かも(海外諸国の全ての端末が VoLTE対応端末に置き換わるとは到底思えません)。ということは 3Gの廃止は2020 年以降になるのでしょうが、各通信キャリアとしてはできる限り早く 3Gから4G 以降のネットワークへの置き換えをしたいというのが本音なのでしょう。

さらに言えば、スマホ比率はさらに高まるとしても、「ガラケー」が完全に死滅するとは思えません。ということで、音声通話専用の VoLTE端末の登場にも期待したいところですね。

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