渦中のウクライナから届いたニキシー管時計|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

知人のFacebook投稿で見かけたニキシー管時計に惹かれ、ついつい筆者もポチってしまいました。

ポチったニキシー管時計、なかなかいい味出しているでしょ?!
ポチったニキシー管時計、なかなかいい味出しているでしょ?!

この時計を製造・販売していたのはニキシー管時計専門オンラインショップ「Nixie Shop」で、じつはなんと渦中のウクライナで製造し、ウクライナから発送しています。

筆者がNixie Shopの直販オンラインショップでオーダーしたのは4月20日。ロシアが2月24日にウクライナへの侵攻を開始し、4月20日ごろというと、東部ドンバス地方にロシアが本格攻撃を仕掛け始めたタイミングで、ウクライナの悲惨な映像が毎日配信されて多くの方がその映像に心を痛めていた時期です(もちろん、報道は減りつつありますが戦争は決して終わっていません)。

そんな戦火の中で、果たして本当に商品が届くのか疑問もありましたが、もはやこれは寄付だと思ってポチったのでした。

Nixie Shopのウェブサイトで紹介されているニキシー管時計は、VFDのものと合わせ、6種類のモデルが紹介されています。価格は130ドルから360ドルまで。ただし、ほぼ欠品状態で、部品が入荷次第生産して発送しているような状況です。そりゃそうでしょう、戦争真っただ中ですから。

Nixie Shopで紹介されている6モデル
Nixie Shopで紹介されている6モデル

Nixie Shopのトップページでは、ショップ近況をアップデートしているようです。もともとNixie Shopはロシア軍が支配を進めているドネツク、ルハンシク、ハルキウなどにほど近い、ドニプロという都市が拠点だったようです。
ショップの近況には、ロシア軍による攻撃が激しさを増す中で3月21日にはショップの一部を新たな場所に移し、ニキシー管時計の生産と出荷を再開したと記載されていました。

4月20日のオーダーから1カ月以上を経た6月7日、拙宅に突然国際郵便が到着しました。いやはや、本当にウクライナからの小包です。配送してくれた日本郵便の配達員さんもウクライナからの発送品ということで驚かれていました。

箱には「Designed and assembled in Ukraine」の文字とニキシー管の中にウクライナ国章のトルィーズブが
箱には「Designed and assembled in Ukraine」の文字とニキシー管の中にウクライナ国章のトルィーズブが

改めましてニキシー管時計についてレビューしていきましょう。
まずニキシー管についてですが、0~9の数字の形の電極が封入されたガス封入管でグロー放電という現象を利用して光らせるものです。1950年代から1990年代まで電卓をはじめ世の中の様々な機器や装置の数字表示器として使用されてきました。
しかし現代では発光ダイオード (LED)、液晶ディスプレイ (LCD) などにその役割を譲り、製造も終了していきました。

今、改めてニキシー管を眺めていると、レトロなこの雰囲気が素敵なインテリアになりますね。

到着後さっそくアダプターをつないでみると、ウクライナでの出荷時にきちんと時刻を合わせてくれていたようで、ちょうどぴったり6時間ずれていました。ウクライナは今、この時間で生活しているんだな、などと思いを馳せながら、しばらくウクライナ時間のまま置いておりました。

電源を接続していなくても時間が狂わなかったのは、バックアップ用のボタン電池が内蔵されているためです。時計パネルの下にあるツマミは、時刻合わせやアラーム設定などを行うためのものです。
また、分の切り替わりのタイミングには、数字がスロットマシンのように0から9までのすべての数字がスクロールされ、日付、年号を表示した後に新たな時間が表示されます。これはニキシー管の数字表示部分の電極(カソード)の劣化を防ぎ、寿命を延ばすために有効なのだそうです。もちろん、12時間表示、24時間表示の切り替えも可能です。

小包に貼られていた宛先票の消印と追跡コード
小包に貼られていた宛先票の消印と追跡コード

小包の消印を見ると、筆者の注文直後の5月4日にスロバキアとの国境に接するウジホロドという町から発送されたことが分かりました。ウクライナの最西端の町まで拠点を移し、ニキシー管時計の生産と発送をコツコツとされているのですね。しかも、商品の発送から1カ月以上を経てようやく日本までたどり着いたわけです。戦時下でいかに物流が混乱しているのかもうかがえます。ともあれ、早く戦争が終わり、ウクライナの皆さんに平和が戻ることを祈るばかりです。

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