ドローンと自動運転バスを組み合わせた物流の実証|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

昨年12月にこちらのコラムにて自動運転バスが定時運行する茨城県境町の話題をご紹介しました。

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東京駅八重洲口から高速バスで1時間20分ほどのところにある境町ですが、自治体として子育て支援策や移住政策にも力を入れ、若い家族の移住が増加している人気のエリアとなっているのだとか。

自動運転バスが定時運行する茨城県境町(筆者撮影)
自動運転バスが定時運行する茨城県境町(筆者撮影)

その境町はその後も続々と先進的実証事業などを行っていますが、このほど株式会社エアロネクスト、セイノーホールディングス株式会社などと共同でドローンや自動運転バスを、トラックなどの既存物流と組み合わせて物流を最適化する「新スマート物流」の実用化に向けた実証を開始したとのリリースが流れてきました。2023年度中をめどに、日本初となる市街地でのレベル4のドローン配送サービスの社会実装を目指すのだそうです。

境町と連携して実証事業を行うのは、物流用ドローン機体を開発する株式会社エアロネクストと、運送事業等を行うセイノーホールディングス株式会社、ソフトバンクのグループ企業で自動運転車両運行プラットフォーム事業を行うBOLDLY株式会社、車両運行管理業務などを行う株式会社セネックの4社。

今後、物流用のドローンを2台導入し、充電などが可能なドローンスタンド(3カ所の予定)および荷物の集約拠点となるドローンデポ(1カ所)を整備した上で、無人地帯での目視外飛行や市街地での目視内飛行の実証を行い、住民の理解促進やルートの検討を進めていくとしています。2022年末に予定されているドローンのレベル4飛行解禁以降は、無人地帯と市街地でドローンの目視外飛行の実用化に向けた実証を行います。

ドローンが飛行できないエリアでは、自動運転バスやトラックを活用して配送を行います。こうした最新テクノロジーを活用して物流を最適化することで、将来的には、注文から30分以内に商品を受け取れる物流システムの構築を目指していくとしています。

2023度中をめどに実装を目指すドローン配送サービスのイメージ(プレスリリースより)
2023度中をめどに実装を目指すドローン配送サービスのイメージ(プレスリリースより)

実証に使われるドローンは、エアロネクストと株式会社ACSLとで共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン「AirTruck」が使用されます。エアロネクスト独自の機体構造設計技術により荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、物流に最適なユーザビリティーと、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化した機体を用います。

物流専用ドローン「AirTruck」
物流専用ドローン「AirTruck」

何より、ドローンと既存の自動運転バス等と連携してスムーズな物流を実現させるには、精度の高い運行管理システムが必要となります。
この運行管理システムとしてBOLDLYの「Dispatcher(ディスパッチャー)」を活用し、また運行管理業務を得意とするセネックがその実務を担います。「Dispatcher」については2020年11月の境町の自動運転バス導入時から利用されているもので、昨年12月に投稿した自動運転バスのコラムでもご紹介していますが、新たに2022年9月からドローン向け機能が実装され、自動運転バスとドローンの両方に接続して一元的に管理することを実現させたといいます。

ドローンにも対応したBOLDLYの運行管理システム「Dispatcher」(リリースより)
ドローンにも対応したBOLDLYの運行管理システム「Dispatcher」(リリースより)

「Dispatcher」の活用により、運行管理業務の効率化やコスト削減が実現できるほか、将来的には関連するデータ活用なども期待できるといいます。さらに今後は、全国の他の自治体と連携して、境町以外の地域を飛行するドローンの遠隔監視を行うことも視野に入れ、取り組みを推進するとしています。

境町社会福祉協議会に設置されている遠隔監視センター(筆者撮影)
境町社会福祉協議会に設置されている遠隔監視センター(筆者撮影)

今回の取り組みでは、境町の住民がスマホアプリで注文したスーパーの日用品や飲食店の料理などを、自律飛行するドローンや自動運転バス、トラックなどを組み合わせて効率的に配送する物流システムの構築を目指し、法制度に沿ってドローンの飛行区域を段階的に拡大しながら実証を進めていくそうです。

日本では、過疎化や地方における公共交通の維持、物流業界の人手不足などが課題となっています。境町は、地方が抱える社会課題の解決に向けて、住民や観光客が移動手段として活用できる自動運転バスを導入して公共交通の維持や地域経済の活性化を推進するなど、積極的な取り組みを進めてきましたが、今回の5者が連携することで、ドローンや自動運転バスを活用した効率的な物流システムを構築し、物流業界の課題解決やCO2削減を図るとともに、住民の利便性向上や地域経済の活性化を目指すとしています。

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