分離プラン後、中古スマホは売れるようになった?!|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

買い替え検討時に「中古端末」を候補に含めるか

近年、筆者は中古スマホの流通動向に関心を持ち、各方面の取材を続けています。そもそもケータイコレクターだったからこそ、みなさんが手放されたケータイやスマホがどこに流れていくのかが気になっていたこともありましたが、とくに本年10月から施行された改電気通信事業法によって、いわゆる「分離プラン」が義務付けられたことにより、中古スマホの流通は拡大するのではと期待を持っていたからです。

世に言う「分離プラン」は、これまで端末販売と回線契約が抱き合わせで、新品のスマホ端末が驚くような値引きをされ安価に購入できる一方で、毎月の通信料金は高止まりのまま、さらに容易に解約できないように契約に様々な縛りが設けられている状態を解消するのが狙いです。これにより、10月以降の回線契約では契約上の縛りはかなり解消(解約違約金は1,000円)された一方で、端末の値引きは厳しく制限(最大2万円まで)されました。

つまり新品のスマホがこれまでより実質的に高価になるため、ユーザーの選択肢として中古端末の購入というのも視野に入ってくるのではと少々期待を持っていたわけです。分離プラン義務化から1カ月少々を経て、実際に端末販売の動きやユーザーのニーズがどう変わってきたか、大変注目していました。

国内のモバイル・IT市場を中心に市場調査レポート等の販売を行う株式会社MCAは、中古端末のユーザーニーズの調査レポートを11月21日に公表しました。詳細はレポートを購入しないと読めないのですが、その一部を公開しています。これによると、ユーザーに対してスマートフォン・携帯電話を買い替える際に「中古端末」を候補に含めるかという設問に、「含めると思う」は8.6%、「多少含めると思う」は14.8%という結果が出たそうです。すなわち、4人に1人は候補として中古端末を含める意向を示しています。年齢層別にみると、20代や30代では候補に含める意向が3割台に達しています。

買い替え検討時に「中古端末」を候補に含めるか
買い替え検討時に「中古端末」を候補に含めるか

その一方で、全体の半数強は「含めないと思う」と回答している点も注目する必要があります。男性は45.5%、女性は56.7%で、女性の方が中古端末に抵抗感が強いようです。中古端末を買い替え候補に含めない理由として最も多かったのが「人が使った端末を使うのに抵抗があるから」ということで、わからなくもない理由といえます。

中古端末を買い替え候補に含めない理由
中古端末を買い替え候補に含めない理由

ただ、中古端末というと、傷や汚れがあるイメージが強いのかもしれません。中古端末販売店で販売されている中古スマホは各社の基準できちんと整備や清掃もされ、決して見劣りはしません。さらには、外装を新品状態に整備し、アクセサリー類は新品を付属させた「整備品」も流通しています。「これが中古なの?」というクオリティーの端末が市販されているわけです。こうした実情がもっとユーザーに認知されれば、中古スマホ流通はさらに活性化していくのではという期待があります。

今回のMCAの調査では、中古端末を購入の候補に含めるかと回答した割合は計23.4%ということですが、分離プラン導入以前からどう変わったかは過去の調査がありませんので、なんとも分かりません。参考になるデータとしては、オークネット総合研究所とMMD研究所が共同で2018年に実施した調査(https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1697.html)があるのですが、この調査では「修理・整備された中古端末を検討できる割合」は日本では13.2%にとどまっていました。調査対象や調査方法も異なっていますので一概に比較はできませんが、多少でも中古スマホに関心を持たれる方は増えていると期待していいのでしょう。

今後も引き続き動向を見ていきたいと思います。

(出典)MCA「中古携帯端末の利用、不要端末の下取りに関する消費者意向調査」
https://www.mca.co.jp/itforecastreport/usedphone-survey-2019/

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