ガラケーいよいよ終焉、ドコモがFOMAとiモードの終了をアナウンス|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

サービス開始当初のFOMA端末

モバイルネットワークはおよそ10年程度のサイクルで世代交代を続けています。現在わが国で主流の通信方式は「LTE」で、2010年にドコモが「Xi(クロッシー)」として開始したものから拡がっています。これは第4世代移動通信サービスのネットワークで、4Gというわけです。そしていよいよ2020年にはわが国でも5Gがスタートします。いきなり世代交代でネットワークが切り替わるわけではなく、新しい通信方式に対応した端末に置き換えが進んだところで、順次古いネットワークが廃止されていきます。

ということで、じつはまだ3Gのネットワークも運用されているのですが、ドコモの3Gサービス「FOMA」が、いよいよ2026年3月31日をもって終了すると正式にアナウンスがありました。合わせてモバイルインターネットサービス「iモード」も同時に終了となります。

「FOMA」は、2001年10月に商用サービスを開始スタート。これは世界初の3Gサービスの商用化として歴史に刻まれています。また「iモード」はFOMAスタートに先駆けて、第2世代移動通信サービス(2G)の「MOVA」のインフラと端末で1999年2月にサービスを開始しました。携帯電話から9600bps(1999年当時)の通信速度でインターネットや電子メールの送受信が可能でしたが、これがFOMAに代わることで通信速度は384kbps(2001年当時)と飛躍的に向上し、より大容量な動画やゲームなどが楽しめるようになったのでした。

わが国のFOMAが牽引する3Gサービスの間に、携帯電話は著しい進化を果たしました。世界の中でも飛び抜けて、わが国の携帯電話は先進的でした。現在、スマホで当たり前に使っている数々のサービスの大半は、FOMAの発展の過程で生み出されたものと言っても過言ではありません。わが国ではスマホの普及が他の先進国より遅れをとってきましたが、その理由はFOMA以降の携帯電話がすでにスマホに匹敵する機能を備えており、むしろスマホ普及以前に世界のどの国よりも早くモバイルインターネットの利便性を携帯電話端末で享受できていたから、スマホに乗り換える必然性を感じない人も少なくなかったからでしょう。

この、FOMAの普及発展期はまさにわが国の携帯電話産業が世界最先端を突っ走っていた胸を張る時代でした。FOMAの進展の過程で登場し、現在は当たり前に定着している主要な携帯電話機能やサービスを振り返ってみましょう。

サービス開始当初のFOMA端末
サービス開始当初のFOMA端末

アプリ

携帯電話上でプログラムを動作させる機能、いわゆるアプリの提供が開始されたのは2001年1月。これはFOMA以前の、ムーバ503i(2G)から搭載されたものでしたが、2001年9月に販売開始されたFOMAは以後発売される全ての機種においてこの機能が実装されていました。音声通話機能しか使えなかった第1世代のアナログ通信方式(1G)からデジタル通信方式となった2Gの携帯電話では、音声通話以外にデータの送受信が可能となり(のちにパケット通信も実装)、画像のダウンロードや楽曲のダウンロードなどの機能が追加されていきました。アプリ機能は、これに続く形でゲーム(すなわちプログラム)がダウンロード可能になったとPRされて広く定着していきました。

ダウンロードできるものが「画像」→「楽曲」→「ゲーム」と変遷したと言って一般のユーザーは「へえ、便利ね」という程度の違いしか感じられないかもしれませんが、技術的に見ると画期的な進化を果たしたことになります。すなわち携帯電話にプログラムが動作する環境(ドコモの場合はJava仮想マシン)が搭載され、仕様に沿って開発されたプログラムをダウンロードして端末上で実行させることが可能になったということになります。

携帯電話としての見た目は従来の端末と大きな変わりはないとしても、それ以前の携帯電話は単なる”通信機器”、アプリが利用可能な携帯電話は”コンピュータ”になった、ぐらいの進化に相当します。

テレビ電話機能

3Gに標準搭載されることになったのがテレビ電話(ビジュアル通話)機能です。2001年9月に最初のFOMAシリーズが登場した際に、テレビ電話機能対応端末「P2101V」がラインアップされ、FOMAの先進性をアピールするもののひとつとして大きく注目されました。テレビ電話を利用するには当初は製品型番に「V」が付く対応端末である必要がありましたが、2004年2月発売の900iシリーズ以降の端末には標準装備となりました。

しかし音声通話とは異なりテレビ電話の利用経験がない人が大半だったこの時代、端末にこの機能が搭載されていても「恥ずかしい」などの理由で利用するユーザーはほとんどいませんでした。900iシリーズからはテレビ電話の際に、自分の顔映像に代わってアニメなどのキャラクター映像を表示させて通話する「キャラ電」という機能も搭載されたが、それでもテレビ電話機能の利用は大きく伸びなかったようです。

現代ではスマホを使ったビデオ通話は当たり前になりましたが、サービス開始当初は新しい使い方に戸惑いも多かったのでしょう。

SIMカードの採用

SIMカードは、世界では2Gの時代からSIMカードが採用され端末と回線の分離が実現できていましたが、わが国では長らく端末と回線は通信事業者がセットで提供される形態をとってきたため、2GまではSIMカードが導入されてきませんでした。しかし、3Gでは世界統一のルールとしてSIMカードの採用が取り決められたため、国内の通信事業者もこれに従わざるを得ず、FOMAでもSIMカードが採用されました。
SIMカードは本来、端末と回線を自由に組み合わせるための手段ですが、端末と回線の分離を嫌うわが国では他の通信事業者のSIMカードを入れると端末が動作しない、いわば”SIMロック”が長らく標準となっていきました。

国際ローミング

いつでも持ち歩いて利用する携帯電話は、ときには国境を超えて利用するシーンも存在します。とくに欧州など地続きで国境を越えることが日常の地域では、早い時期から周辺国と携帯電話の通信方式などに足並みを揃え、相手国の通信エリア内でも自分の携帯電話が利用できる国際ローミングの提供が行われてきました。しかし周囲を海に囲まれているわが国では周囲の国と足並みを揃える必要がなかったため、2Gでは独自の通信方式が採用され、他国では利用できないことが当たり前のこととなっていました。
逆に他国と足並みを揃える必要がなかったことから、わが国の携帯電話が世界に先駆けて通信事業者主導で進化できたというメリットもありました。

3Gでは国際電気通信連合 (ITU) において通信方式を世界で統一規格化することで、世界的にローミング利用を可能とすることが義務付けられたことで、わが国の携帯電話も国際化を果たしていきます。ただしFOMAとして2001年9月に3Gがスタートした時点の端末やネットワークは、世界に先行して3Gサービスを実現させることを急いだため国際仕様が定まる以前の規格でサービスインすることとなったため、ドコモで国際ローミングが対応になったのは2004年12月に発売されたN900iG、N901iC以降の端末からとなりました。

おサイフケータイ

携帯電話にICカードを内蔵させ、電子マネーや電子会員証にできるサービスとして、ドコモは2004年6月に「おサイフケータイ」対応端末としてF900iCなど2Gの3モデル、FOMA1モデルの発売を発表しました。当初は電子マネーサービスのEdyなどが対応しましたが、利用者が増加していったのは端末が十分に普及しJR東日本がモバイルSuicaの提供を開始して携帯電話を乗車券として利用できるようになった2006年1月以降です。

現代ではスマホで決済するという利用シーンが世界で当たり前のこととなりましたが、やはりその先駆けはわが国から始まったといえます。


最盛期となった2011年には約5,700万契約を突破するところまで普及していたFOMAですが、いよいよ風前の灯です。
2026年3月31日をもっていよいよサービスを終了し、FOMAネットワークの運用に割かれていた経営資源は今後、2020年にスタートする5Gサービスに集中させていくことになります。

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