Yahoo!スコアやLINEスコアなど、個人に紐づくデータをもとにして、その人の信用力を分析し数値化するサービスが続々とサービスインしています。そしてさまざまな企業が信用スコアを活用し、多様なビジネスを始めようと画策しているところです。
中国ではすでに「芝麻信用」を筆頭に、個人の信頼性を評価する基準として信用スコアをめぐるサービスが広く浸透しており、それらはわが国でも各所で報道され、知られるようになりました。
果たしてわが国では、信用スコアをめぐるサービスはどのような方向に向かうのでしょうか。
わが国でもこうした信用スコアサービスがスタートしたことを多くの人が知るようになったきっかけが、ヤフーがさる6月3日に発表した「Yahoo!スコア」をめぐってネット界隈で大騒ぎになったところからでしょう。
Yahoo!スコアは、ヤフー利用者の個人情報をもとにスコア化しているようで、以下の情報を取得して算出します。
<Yahoo!スコアの評価ポイント>
〇本人確認
住所、氏名や電話番号、メールアドレスなど
〇信用行動
ヤフオクの取引実績、ショッピングでのレビュー回数などのほか、Yahoo! JAPANへの支払いの延滞や飲食店の予約キャンセルなど
〇消費行動
Yahoo! JAPANのEコマースやYahoo! ウォレットなどの利用金額
〇Yahoo! JAPANのサービス利用
Yahoo! JAPANが提供するサービスの利用頻度など
これらの個人データが900点満点でスコア化され、ユーザーはデータ提供の見返りとして、ヤフーのサービスを利用する際にさまざまな特典が付与されるということになっています。このスコアは企業に提供され、さまざまなサービスの展開に利用されていく予定です。
このスコアを利用しようという企業ですが、昨年10月の時点ではパートナー企業として12社1団体が名乗りをあげていましたが、実際にサービス開始時に実証実験を行ったのはランサーズ株式会社、株式会社クラウドワークスなどの4社だけでした。ヤフーでは新たなパートナー企業の募集も始めていますが、はたしてこれからどれくらいの企業が参加するのか見えていません。
このYahoo!スコアは、Yahoo!IDの初期設定でYahoo!スコアの作成が「同意する」がデフォルトになっていたことに批判の声があがりました。さらに、オンラインで随時自分のスコアが確認できないというところもユーザーの不安をあおっています。
追うようにして6月27日から、LINEが「LINEスコア」を開始しました。LINEアプリのウォレットタブから「スコア」アイコンをタップして利用が可能になります。まず、LINEスコアを開始するとLINEサービス利用状況に応じた一次スコアが算定されます。その次に、年収や雇用形態、社会保障などに関する15個の質問に回答することで、100~1000点のスコアが算出されます。
さて、中国ではすでにこうした信用スコアがQRコード決済と共に広く使われていることが知られています。最大手はアリババグループの関連企業が提供する「芝麻信用」(ジーマしんよう、セサミ・クレジット、などと日本では表記されることもあります)で、QRコード決済のアリペイなど、アリババ関連のサービスを利用した際のデータを利用し信用評価を行っています。
じつはこうした信用評価の仕組みは、わが国でも使われてきたクレジットスコアの原理を取り入れたものです。ただしクレジットカードの返済履歴やQRコード決済の買い物履歴のほかに、個人の生活情報がまるごとAIによって点数化されるのが特徴です。その結果、人格や能力を含めてトータルで個人を格付けする基準になっています。
芝麻信用は以下の5つの項目に分けて、それぞれ点数をつけています。
<芝麻信用の評価ポイント>
〇年齢、学歴、職歴など
〇返済能力
〇返済履歴情報
〇人脈(リアルおよびSNSを使ったネット上の交友関係など)
〇日常の行動や趣味趣向
これら点数を合計してユーザーの総合点を最高700点で算出します。ちなみに点数に応じて次の5段階にランク付けされ、たとえばスコアが「極めて優秀」であると、銀行ローンの金利が優遇されるなどの特典が得られる一方で、「劣る」と飛行機や長距離列車のチケット購入の際にデポジットを要求されるなど、様々な制約が出てくるようです。
<芝麻信用のランク>
700~950 極めて優秀
650~699 優秀
600~649 良好
550~599 普通
350~549 劣る
芝麻信用の場合、点数は毎月更新され、利用者は自分の点数を確認することができるそうです。これはLINEスコアも同様ですね。
アリペイで吸い上げられる情報には、シェアリングエコノミーで自転車を借りたときに規約通り返却したか、SNSでどんなことを話しているかなども含まれるそうです。
さらには罰金などの行政処分や裁判、犯罪履歴などの究極の個人情報まで、スコアリングの対象になるそうです。この辺りを学生に調査させたら、なんと「K-POP追っかけ」も減点対象になるのだとか。そういえば、中国のK-POP追っかけが飛行機の運行トラブルに発展したトラブルが日本でも報道されていましたね。
社会的に問題を引き起こしたことは評価の対象に加えられていくようです。
こうした個人情報の社会での利用にはすでに様々な意見が噴出しているところですが、そうしたところは識者のご議論に委ねるとして、いずれわが国でもこうした信用スコアサービスを避けて通れない時代になっていくと思われます。
したがって、利用せざるを得ないことを前提に、「どう向き合うか」を考えていくことが重要ですね。
「そんな信用スコアなんて使わなければいいじゃないか」という声も聞かれますが、いやいやそれではクレジットヒストリーが無い人と一緒ってことですよ。信用スコアを使っていないということは、信用スコアが無い(低い)人たちと一緒に扱われかねないわけです。
中国の人たちも、こんな仕組みに縛られて窮屈ではないのかと思うのですが、現地の人たちの様子を伺っていると、やはり「上手に付き合っている」という感じでした。
要するに、うまく自分のスコアを上げるコツも分かっていて、逆にスコアが減点になるようなケースでは、あえてそういう買い物でQRコード決済を使わず現金払いにするなど、ちゃんとシチュエーションに応じてQRコード決済と現金とを使い分けしていたのです。これらこそ、今後求められる新たな“情報リテラシー”ではないでしょうか。自分のスコアを高める上手な使い方ができるリテラシーといいましょうか。
実際に、情報を使いこなしている人たちは社会で優位な地位に立っている一方で、スマホやQRコード決済を上手に使いこなせていない、いわば”情報弱者”はますます社会から取り残されていき、一段と社会的な格差が広がっていくような印象も受けました。
さあ、わが国でも他人事ではなくなってきましたね。