もはやクルマではなく“走るIoT”、Byton│木暮祐一のぶらり携帯散歩道

BYTON
2012年に米国シリコンバレーの視察に行った際に、そこで初めて電気自動車メーカーのテスラの実車を見て感激した記憶があります。そこで触れたのはモデルSの初期生産モデルでしたが、もはやそれは“タブレットにハンドルとタイヤが付いたデバイス”というのが第一印象でした。
通信できることが前提、そして車両の操作は大型タッチパネルモニタから行い、その操作もタブレットの機能設定やアプリ利用の際の手順そのもので、クルマという概念をひっくり返したものでした。

また、テスラは市販開始後にこのシステムのOSアップデートを配信するようになり、スマホと同様にアップデートで新たな機能が追加されることもありました。

アップデートの中で一番驚いたのは、2016年1月15日(海外では2015年秋に実施)のアップデートで「自動運転」機能(といってもレベル2ではありますが十分に衝撃的でした)が利用可能になった、なんてこともありました(関連記事:https://www.rbbtoday.com/article/2016/02/03/139334.html)。

さる1月に米国ラスベガスで開催された家電見本市「CES2019」でも、様々な自動車関連の出展も多かったようです。
それらの中で、テスラを初めて見た時の衝撃を超えるものがありました。それは中国の新興電気自動車メーカー・Bytonが、2019年中にも発売をするというコンセプトモデル「M-byte」です。テスラの第一印象が“走るタブレット?!”だったことに対して、このBytonは“走るIoT ?!”って感じました。

中国・Bytonのコンセプトモデル「M-byte」
中国・Bytonのコンセプトモデル「M-byte」

まずダッシュボードの代わりに49インチの横長巨大ディスプレイを搭載、ステアリング部分にもタッチパネルディスプレイが備えられています。何より“走るIoT ?!”と感じさせる点は、車両に様々なセンサーが搭載され、クラウドと連携してユーザーに様々なアメニティを提供するところでしょう。

フロントに備えられている大型ディスプレイには、走行に関わる様々な情報は当然として、顔認証によりユーザーの判別して、ユーザーのプレイリストに対応した楽曲を流すといったことができるようです。Amazon Alexaも搭載しているのだとか。
当然、移動しながら利用することを前提に、ユーザーに応じて様々にカスタマイズされた情報提供が可能になってくることでしょう。たとえばBytonに「お腹空いた」なんて話しかければ、クラウドに蓄積されたユーザーの嗜好も考慮して、好みに合わせたお店まで連れて行ってくれるかもしれません。

横長49インチの巨大ディスプレイを装備
横長49インチの巨大ディスプレイを装備

大型ディスプレイの左右端を見てください。おそらくそのシートに誰が座っているのかを認識しているイメージであると思いますが、ユーザーの好みに応じた室温設定はもちろんのこと、顔画像下には心拍数も表示されています。つまり、何らかのセンサーでBytonのシートに座っているユーザーの心拍数を検出しているのでしょう。

いま、ヘルスケアITの研究分野では、心拍数のゆらぎの分析によって交感神経、副交感神経の状態、さらには様々な健康状態のモニタリングが可能であることが分かっています。このBytonはシートに体重計も備えられていて、心拍数計測とあわせ健康管理のプラットフォーム機能を備えているのだそうです。そんな発想、これまでのクルマには無かったですよね?!

サイドミラー代わりにカメラを装備。車内外、カメラとディスプレイ、センサーだらけな自動車です
サイドミラー代わりにカメラを装備。車内外、カメラとディスプレイ、センサーだらけな自動車です

ネット上の情報によれば電気自動車としての航続距離は約400キロで、価格は約4万ドル(約450万円)程度になる見込みだと。
また自動運転機能については一部制限もあると思いますがレベル3(高速道路など特定の場所でシステムが全てを操作、緊急時はドライバーが操作対応する前提)を装備。

発売後、日本に輸入されることは当面なさそうですが、入手できるならぜひ欲しいガジェットの一つになりました。何より、“クルマ”という過去の概念にとらわれず、クラウドネイティブな人たちが「クルマを再発明した」って感じですよね。しかもいずれ自動運転が当たり前になる時代に、クルマはユーザーに対してどのようなアメニティが求められるのかを真剣に考えて独自のコンセプトを打ち出している感じです。

一方、日本の自動車メーカーの一部もCES2019に出展していたと聞きますが、従来のクルマの概念から抜け出せてはいなさそうでした。とても残念。

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