対象物の凹凸を検知してデータ化、最終的には立体を作り上げる3Dスキャナは、現在注目が集まっているVRと同様に発展途上な分野です。2010年にマイクロソフトが圧倒的な低価格で3Dセンサーを発売したことを皮切りに、より身近な環境で活用されるようになりました。医療や化学、最近では美術作品や建築をはじめとする幅広い現場で使用されるようになったことで、今までに体感したことのない新しい文化が創造されつつあります。そんな3Dスキャナですが、ついにファッション業界にも活用されるようになりました。
3Dスキャナを取り入れたのは大手ファッションビルを経営する株式会社パルコです。パルコは以前からICTの活用に力を入れており、2017年3月にはVRでお買い物ができる「VR PARCO」をオープンして反響を呼びました。今回3Dスキャナを用いた「STYLYスキャナー」は、顧客の全身コーディネートを3Dスキャナで撮影し、3D化したデータをQRコードに変換、最終的には渡されたQRコードで全身コーディネートを360度スマートフォンで閲覧できるというサービスになっています。
パルコが渋谷区宇田川町で運営する「SR6」において、MARK STYLER株式会社が出店する「RUNWAY channel Lab. SHIBUYA」にて12月14日からc導入を開始しています。3Dスキャナ技術のサポートや運営協力には株式会社 psychic VR Labが協力しています。同社はアパレル専用の高精細3Dスキャナで撮影したファッションアイテムとVR技術を組み合わせることで、仮想空間上にファッションブランドの世界観を再現し、新たなショッピング体験を提供するファッションVRプラットフォーム「STYLY」を運営しています。
顧客側としては、鏡で見ることができる前の姿はもちろん、写真を上下左右にスワイプすると後ろ姿や細かい部分等の普段自分では見ることができない部分まで見ることができるので、全身の雰囲気を掴むことができます。実際に利用した人は「とても新鮮」と、高評価。IoTを使用した方法は、ターゲットである若い世代にとって「新しいファッションの楽しみ方」と受け入れやすいでしょう。
一方パルコの狙いとしては、若い世代のSNSを活用した発信力にあります。実際に撮影した3D画像は動画としてSNSに投稿可能です。いわゆる「SNS映え」に便乗してしまって、撮影した画像を利用者がFacebockやTwitterに投稿してくれることで情報拡散される効果を狙っているはず。パルコはそうした発信力が優れている20代を中心とした若者世代に注目し、新商品の宣伝に役立てようとしているのでしょう。
このように、今までニッチな分野でしか注目されていなかった3Dスキャナですが、ファッション業界でも活用されるということは、若い世代への認知にも繋がります。さらには、若い世代の武器であるSNSの活用によって、より3Dスキャナの存在は身近になることでしょう。「VR元年」と言われた2016年に続き、5年後、10年後にはもしかしたら3Dスキャナが一般に浸透し、社会生活を変えているかもしれません。