MVNOのデータ通信用SIMが熱い戦いを繰り広げているぞ|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

3キャリアが新料金プランへ移行しつつありますが、基本使用料がスマホの場合で2,700円(さらにISP料300円も必要ですから実質3,000円)が最小限かかり、それに加えてパケット通信料が必要となると、複数台をあれこれ使い分けたい筆者にとっては出費がかさむばかり…。頭の痛い話です。POSTCO Lab.の読者の皆様にもそういう方は多いのではないでしょうか。
 そんな中で、今まさに勢いがあるのがMVNO(=Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)の各社です。いわゆる「格安SIMカード」の販売競争を繰り広げている真っ只中。中でも、月額税別900円前後の基本使用料帯で激しい競争が繰り広げられていまして、上手に活用すれば毎月の通信料金コストを大きく削減でき、筆者も嬉しい限りなのです。

月額約900円前後のMVNO競争勃発

 POSTCO Lab.の読者の皆様にはもはや説明不要と思われますが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといった、いわゆるインフラを独自に構築しサービス提供する通信事業者(MNO=Mobile Network Operator)から、通信設備等を借り受け(卸売り契約など)、独自のブランドで通信サービスを提供するのがMVNO(=Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)です。ソフトバンク網を使ったディズニー・モバイル・オン・ソフトバンクや、KDDI(au)網を使ったケイ・オプティコムの「mineo」などもありますが、大半のMVNOはNTTドコモからネットワークを借り受けてサービス提供をしています。従って、NTTドコモが販売した端末であれば、そのままSIMカードを差し替えるだけで、MVNOの料金体系でスマホやタブレットを活用できてしまうのですね。
 大半のMVNOは独自ブランドでのSIMカードのみの提供に留め、その販路は特定の提携チェーン店に絞ったり、インターネット専売にするなどし、またサポート体制も最小限のコストに留めることで、通信料金はMNOもより安価に設定されているのです。
 U-NEXTさんのようにアンテナショップ的店舗を持たれる所もありますが、大半のMVNOはインターネットを通じた販売とプロモーションのみのところも多く、その存在自体がまだ一般のユーザーには十分に認知されていないのが残念ですね。さらに言えば、MVNOを使う場合、端末調達も、ネットワーク設定を含む技術的サポートも自己責任で、自分の判断で調べ、活用する必要があります。このあたりがまだまだ敷居が高いのでしょう。
 また、MVNOの提供するSIMカードには、データ通信専用のプランと音声通話(090/080/070番号)付きのプランの2つが選択できますが、音声通話付きのプランは本人確認の手続き等が非常に面倒です。ましてやMNPを利用し、同番号で利用できるようにしようものなら、回線切り替えの数日間は電話番号が使えなくなります。ビジネスなどに使うメイン回線だったら、そんなことできません。
 ということで、MVNOはデータ通信専用プランで、不要になったらすぐに解約するつもりで、気軽に使うのが一番。何しろ競争が激しい世界ですから、いつ、自分が使っているSIMカードよりもお得なものが他MVNOから出てくるかわかりませんからね。
 さて、最近の主流は、前述したとおり900円前後のプランということになりますが、なんとこの通信料でLTE方式の高速データ通信に対応しているというのが驚きなのです。まあ、MNOの新料金プランで設定するパケット通信料も1GBあたり1,000円を切るようになってきたわけですが、ということはMVNOであれば基本使用料無しで、パケット通信料のみ払えば、スマホやタブレットを使えてしまうということなのです。
 そのMVNOの料金プランのパターンは、データ容量の上限の設定の仕方で大きく2種類に分類されます。それは、(1)データ通信量の上限が月単位で定めているプラン(IIJmioの「高速高速モバイル/D ミニマムスタートプラン」等)と、(2)データ通信量の上限を日単位で定めているプラン(NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE 50MB/日コース」等)の2つのパターン。両タイプのプランをどう使い分けるかですが、筆者の場合、タブレット端末では(1)を組み合わせます。毎日タブレットを使うことは無いのですが、使うときは使うときで、1日に大量にデータ通信を行ったりします。そんな使い方の場合は月単位の上限があるパターンのほうが良いでしょう。一方で、毎日欠かさず持ち歩くスマホでMVNOのSIMカードを使うようなケースでは、(2)の日単位で上限が定められているものが便利です。
 ちなみに筆者はサブ端末複数で、この日単位の上限制プランを使っています。スマホの使い方も、そのほとんどはSNS(LINEやfacebook)が中心。あとはカメラで撮影した画像が自動でバックアップされるような使い方です。これまでの経験では、この程度の使い方だとせいぜい2GB/月に収まっています。
 これは家族全員でスマホを使うようなご家庭でも有効に使えそうですよ。facebookでこの話題を書き込んだら、普通な使い方をされている(というか、モバイル業界外の一般家庭の友人知人)から、大変参考になったという話をいただきました。子どもがスマホを欲しがるので、お父さんのスマホを払い下げて、SIMは日単位上限のMVNOにする、というケースです。これですと、1日の高速通信可能な上限が決まっていますから、スマホの使いすぎにも歯止めが掛るのです。月単位の上限だと、月半ばで「もう使えなくなっちゃった(>.<)」なんてことになりかねません。日単位だからこそ、これぐらいまでなら使っていいかなという感覚が養われるそうで。

音声通話はアプリで十分

 データ通信専用サービスの難点は、通話ができないということです。前述のご家族も、本来はお子さんとの緊急連絡用に携帯電話やスマホが必要なわけで、音声通話も欠かせません。もちろん各MVNOは、音声通話可能(090/080/070番号付き)のサービスも提供していますが、MNOほどではないにしても基本使用料がアップしてしまうことと、契約時に本人確認書類の提出が必要なため手続きが面倒になるなど、MVNOを使うメリットが薄くなってしまうのが難点。
 ではデータ通信専用のMVNOサービスでは全く音声通話ができないのかというと、抜け道はいくつもあります。まず、多くのユーザーが利用するようになった「LINE」は、本来「無料電話アプリ」として登場したサービスです。LINEを使うユーザー同士で音声通話をすることができます。同様に、facebookも独自の音声通話機能を備えるようになりました。パケット通信を通じて、通話は可能なのです。しかし、これらのアプリは同じアプリを使うユーザー同志でなければ音声通話ができません。
 やむを得ず電話番号を使った従来の電話網と相互接続するには、たとえばNTTコミュニケーションズが提供する「050plus」(月額利用料300円)などの電話番号付きの通話アプリをインストールすればよいでしょう。090/080/070といった携帯電話の番号にこだわらなければ、この「050plus」アプリをインストールするだけで、固定電話や携帯電話との相互の通話が可能になります。MNP(番号ポータビリティ)にこそ対応していませんが、スマホを買い換える際などは、新しいスマホにアプリをインストールし、設定さえすれば同じ050plus番号を継続して利用できます。050plus同士であれば通話は無料。090/080/070の携帯電話番号付きプランで利用するユーザーであれば、050plusをインストールすれば、1台のスマホで2つの電話番号を使い分けることもできます。お父さんはMNOで通常の契約のスマホを持っているようなケースでも、050plusをインストールすれば、お子さんとは通話が無料になります。

OCNモバイルONE050plus付き。
筆者のセレクトは「OCN モバイル ONE 050 plus付き」(50MB/日パッケージですが、10月1日より70MBまで使えるようになりました)。これをSIMフリーのiPhone 5で運用しています。

 さて、そのMVNOのSIMカードの入手をどうするか。大都市部に住まわれている方や、インターネットの活用に長けていらっしゃる方はいくらでもMVNOの情報に溢れ、購入できる店舗もお近くにあることでしょう。しかし、大都市圏から一歩離れると、MVNOの認知は低く、そもそもどういうものなのか、どこで売っているのかという情報さえ、伝わってきません。
 ただおかげさまで「イオンが格安スマホを発売」というニュースで、MNO以外の販路があることに気づかれた地方のユーザーも増えてきました。家電量販店でも一部扱っているところがありますが、このほかにDVDレンタル大手の「ゲオ」が近年熱心にスマホの買取や中古販売に加え、MVNOのSIMカードの取り扱いをし始めたことで、ようやく認知が広がりつつある感じです。郊外でもよく見かけるDVDレンタル大手「ゲオ」ならば、思い立ったらすぐに買いに行けて(しかも深夜まで営業している)、アクティベーションすればすぐに利用できるというのが便利ですね。

DVDレンタル大手「ゲオ」でMVNOのSIMカード
全国どこでも見かけるDVDレンタル大手「ゲオ」では「OCN モバイル ONE」などのMVNOのSIMカードを常備。正直…、地方都市では「ゲオ」ぐらいでしかMVNOのSIMを扱っているところが無いのです。

 ちなみに現在「ゲオ」が取り扱うMVNOは、So-netの「Smart G-SIM」とNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」。NTTコミュニケーションズといえば、前述の「050plus」の提供会社でもあります。そして、「OCN モバイル ONE」は日単位の上限を定めたプランがあり、かつ「050plus」が月額150円でできるオプションパッケージプランも用意されています。
 ということで、今やお子さんに持たせるスマホに入れるMVNOのSIMとして最人気なのが「OCN モバイル ONE 050 plus付」だそうで、筆者もこれを試しに愛用しているところです。ちなみに日単位の上限で50MBのコースを選択しましたが、嬉しいことに10月1日からデータ容量が上限70MBへ拡張されました。他のプランも増量されたようですし、じつはNTTコミュニケーションズ以外のMVNOでも、10月1日付けで値下げ等を行ったところが多数ありました。まさに各社激戦中なのでしょう。
 なお筆者の場合、050plusは以前から利用していまして(しかも良番を複数キープ済み)、この「OCN モバイル ONE 050 plus」で半額(050plus本来の月額300が150円になり)に魅力を感じて購入してみたのですが、残念ながら「OCN モバイル ONE」のアクティベーションと同時に契約した050plus回線でなければ半額にはならないようで、ちょっと残念でした(※1)。しかし、3G時代から050plusを使ってきた筆者としては、LTE網を使うことで随分と音声通話品質が向上したんだなと改めて感心しました。しかも、待受時の電池消費もかなり抑えられているようです。
 MVNOを利用する場合、スマホやタブレットの端末は独自に調達しなくてはならなりません。イオンやカメラ量販店などは、一部で独自の端末販売も開始していますが、MNOの3キャリアに比べると選択の幅は極めて狭くなってしまうのが惜しいところ。MVNOで安価に運用するのは、私たち業界関係者は苦ではないことですが、困ったときにすぐにキャリアショップに駆けつけて相談に乗ってもらう、というような一般の消費者にどこまで浸透するか、そこが大きな課題ですね。ただ、いずれにしてもMNOそしてMVNO各社が競争することで、より安価に、より便利にモバイルサービスが利用できるようになることを期待したいばかりです。

<※1 2014年11月9日 追記>
こちらですが、モバイルONEのアクティベーションと同時のタイミングのみならず
後からでも、モバONEと050 plusを請求合算すれば050 plusの月額料金が
半額になるそうです。
【適用条件:http://info.050plus.com/2014/225.php】
【050 plus既契約者およびモバONE既契約者の請求合算方法:http://050plus.com/pc/050_mobileone/index.html#case】

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