コロナ禍でキャッシュレス決済が増えた?!|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

NTTドコモ モバイル社会研究所は、2021年2月に感染症対策の意識に関する調査を実施し、その中で「キャッシュレス決済」に関する項目の結果を7月14日に公表しました。

キャッシュレス決済というと、中国が世界の中でダントツに進んでいるのは知られている一方で、日本はずっと現金主義を貫いてきて後れを取っている分野というイメージでした。実際に2017年に日銀が公表した「モバイル決済」(モバイルでの決済)に関するレポートでは、日本6%、米国5.3%に対し、中国はなんと98.3%が利用したという回答を得たということです(https://jp.techcrunch.com/2017/06/21/report-mobile-payment/)。

実際に中国に行くと、少なくともAliPayとWeChat Payならば使えない店舗やサービスを探すのが難しいほどです。中国でなぜそれほどキャッシュレス決済が普及したのかというと、諸説はありますが、きっかけになったのは2002~3年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)や、2012年に流行したMARS(中東呼吸器症候群)などのたびにキャッシュレス化の推進が進んだと言われています。

そしてこのコロナ禍で、わが国でもキャッシュレス化は一段と進むと言われていました。厚生労働省が2020年5月に発表した「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式の実践例」の中で「電子決済の利用」を掲げたこともあり、キャッシュレス化が進むとみていました。実際にモバイル社会研究所が公表したデータを見ると、全体では37.8%が利用していると回答。とくに年齢層が高いほどキャッシュレス決済の利用率が固くなっており、70代女性では46.0%が利用していると回答しています。これは思いのほか、利用が進んでいる感じですね。

性年代別にみる「キャッシュレス決済利用」
性年代別にみる「キャッシュレス決済利用」
[調査対象:全国・15~79歳男女・複数回答・n=6,240]
一方で、10代のキャッシュレス決済利用率が20%程度と低いのが気になります。どうせスマホを持っているでしょうし、であれば小遣いはたとえばLINE Payなどで毎月5千円送金して、その範囲で使うようにと指示をするとかすれば良いのではないでしょうか。

キャッシュレス決済であれば何に使ったのかの履歴も残るわけですし、毎月の振り返りもしやすくてよさそう。賢く使ってポイントを活用し、親からもらう金額以上に商品を購入するなんてこともできるでしょうし、お小遣いを投資に回して資産を増やすなんてことを考えるお子さんが増えたら良いではないですか(LINE証券は未成年の口座開設ができませんが、SBI証券など、親権者同意の上で口座開設できるネット証券会社は多数あります)。

このほか、都道府県別のキャッシュレス決済利用動向についてもデータが公表されています。県別で最も利用率が高いのが沖縄県で48.6%、次いで栃木県44.8%、山形県44.2%と続きます。逆に利用率が低いのが愛媛県で27.9%、岐阜県28.4%、宮崎県29.6%など。ところが地域との相関は薄そうで、たとえば四国4県を見ると香川県、愛媛県、高知県が利用率が低い一方で徳島県は上位に食い込むほど利用率が高くなっています。山形県の利用率が高い一方で隣県の秋田県は低調気味。これは県民性ということなのでしょうか、それとも地域の企業などの取組みの何かしらの成果でしょうか。興味深いところです。

都道府県別にみる「キャッシュレス決済の利用」
都道府県別にみる「キャッシュレス決済の利用」
[調査対象:全国・15~79歳男女・複数回答・n=6,240]
赤い色が高い傾向で青い色が低い傾向を示す。
コロナ禍で疲弊している地域の店舗や飲食店を支援するために、地域通貨を導入する自治体が増えています。地域通貨というと、以前はクーポン券・商品券など紙ベースのものが多かったのですが、最近はこれらもキャッシュレス決済に移行しています。紙ベースのものですと、それらを受け取った店舗や飲食店がわざわざ銀行等に出向いて換金しなくてはなりません。一方、キャッシュレス決済のアプリタイプの地域通貨なら決済が電子化されているので換金処理もオンラインや振り込みなどで手間が省けるのですね。

決済分野もデジタル化を一層推進していく必要があると感じています。

モバイル社会研究所「感染症対策としての 「キャッシュレス決済の利用」約4割:シニア女性が多く利用・沖縄では半数が利用」
https://www.moba-ken.jp/project/others/lifestyle20210714.html

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