Androidフィーチャーフォンの必然性|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

各通信キャリアが2015年夏モデルの発表会を行いましたが、KDDIに加えNTTドコモからもAndroid OSを搭載したフィーチャーフォン(ガラケー)が登場しました。“ガラケーへの回帰”とまでは言えませんが、筆者はそれなりに音声通話を主体に使いたいユーザー層に、こうした端末のニーズはあると考えています。そしてAndroid OSを搭載することも必然のことでしょう。今回はこの点を説明させていただきたいと思います。

ネットワークの進化に対応したガラケーと考えるべき

 2015年夏モデルとして、KDDIはシャープ製の「AQUOS K SHF32」を、NTTドコモは同じくシャープ製の「AQUOSケータイ SH-06G」と、富士通製「ARROWSケータイ F-05G」という、Android OSを備えながらも、形状は従来のフィーチャーフォンタイプの端末をそれぞれ発表しました。

KDDIの「AQUOS K SHF32」(シャープ製)
KDDIの「AQUOS K SHF32」(シャープ製)
NTTドコモの「ARROWSケータイ F-05G」(富士通製、左)と「AQUOSケータイ SH-06G」(シャープ製、右)
NTTドコモの「ARROWSケータイ F-05G」(富士通製、左)と「AQUOSケータイ SH-06G」(シャープ製、右)

 じつは2015年春モデルとして、KDDIからガラホこと「AQUOS K SHF31」が登場した際、様々なメディアから「なぜ、こういう端末が登場してきたのか」「これはガラケーと言っていいのか」など多くの質問をいただきました。

 はっきり言って、これは“ガラケーの正当進化”と考えています。というのは、モバイルネットワークは常に進化を続けています。モバイルの通信インフラは3GからLTE(4G)主流になってきたわけですが、そうなれば当然LTEネットワークで利用可能なガラケーをラインアップさせる必要がでてきます。しかしながら、新たにLTEネットワークに対応した専用のガラケーハードウェアを製造するには、大きなコストが掛かります。これを回避するには、すでにスマートフォン用に設計された端末チップセットや基本ソフト(OS)を流用したほうが、一から設計し直すよりも負担は少ないはずです。こうした事情から、今後登場してくる“ガラケー”はAndroid OSとスマートフォン用チップセットを搭載したものが“常識”になっていくと思います。

 ネットワークは常に進化を続けています。過去のネットワーク進化を振り返ってみると、初代アナログ携帯電話サービス(第一世代=1G)は1979年に東京23区内からスタート。そして第二世代方式(=2G)と呼ばれたデジタル方式は、1993年にスタートし、’90年代はアナログ方式とデジタル方式が混在した状態でサービス提供が行われました。この混在期間に、従来のアナログ方式ユーザーを2G方式の携帯電話に買い替えを進めて行き、ユーザーの移行がほぼ終わったタイミングで旧方式を停波させ、サービス廃止とします。アナログ方式はおよそ1999年頃に各社とも終了させました。そして、2001年にはCDMA技術を使った第三世代(=3G)方式がスタートします。’00年代は2Gと3Gが同時にサービス提供され、その間にユーザーは2Gから3Gのサービスに移行して行ったわけです。そして2G方式は2012年にサービス終了。2Gとも重複しますが、現在第四世代方式(=4G)とされるLTE方式がスタートしたのは2010年末からです。現在は3Gと4Gが併用されているタイミングとなります。

 当然のことながら、最新のスマートフォンはみなLTE対応が当たり前となりました。しかしながら、ガラケーは3Gのままでした。じつはLTE方式のネットワークはデータ通信専用となっており、ガラケーやスマートフォンで音声通話を利用する際は、端末側でネットワークを3Gに切り替えて通話を行っていました。

 昨今話題のVoLTE(Voice over LTE)。これはデータ通信専用ネットワークであるLTE上で、音声通話を可能にする技術です。じつは、これこそ、近い将来3Gネットワークを廃止するためにどうしても必要になってくる技術なのです。契約するすべてのユーザーの端末がVoLTE対応になることで、ようやく3Gネットワークを廃止できます。前述のとおり、モバイルネットワークはおよそ10年ごとに新世代が登場し、約10年程度の併用期間を経て、新たなネットワークにバトンを渡していきます。3Gが登場したのは2001年。ということは、2021年ぐらい、あるいは多少余裕をみても2023~4年頃には3Gサービスは廃止されるのでしょう。その間に、すべてのユーザーの端末をVoLTE対応機に買い換えてもらう必要があります。

 さて、都心部ではスマートフォンへの移行がかなり進んでいますが、いまだに地方ではガラケー率が高い状況にあります。やはり日常の交通手段に自家用車を利用している地域ほど、スマートフォン普及率は低いようです。自宅や勤務先にはブロードバンドが整っているという状況で、移動中にインターネットを利用するシチュエーションは無いというわけです。こうした環境の中で、無理やりスマートフォンへの移行を促すわけにもいきません。ですので、どうしてもガラケーのラインアップは必要となってくるわけですが、近い将来の3Gサービス終了を考えると、どうしてもLTE方式とVoLTEに対応したガラケーが必要になってくるわけです。こうして、KDDIやNTTドコモが、製造コストを抑えるべく、Android OSを搭載したガラケーを出さざるを得ないと考えたのでしょう。

ケータイEメールからLINEへのシフトも必然

 両キャリアのAndroid OS搭載ガラケーでは、Android OSが搭載されているといえど、その操作性は完全に従来型ガラケーのそれそのものです。ディスプレイもタッチパネルではありません。ですので、Android用に提供されているアプリの多くは使えないこともあって、これらの端末ではGoogle Playにも接続できません。専用のアプリは各キャリアおよび端末メーカーが用意しているもののみとなります。

 そういった中で、LINEだけはこれらの端末にプリインストールされています。これこそ、長年続いてきた日本のケータイEメール文化の終焉ではないかと驚いています。わが国のケータイEメール文化は、iモード登場時の1999年以降、一気に根付いていきました。世界では電話番号をアドレス代わりにメッセージの送受信ができるSMSサービスが一般的でしたが、わが国では通信キャリアを超えてSMS(ショートメール等)を送受信することができませんでしたので、(2011年以降はキャリアを超えてSMS送受信が可能になりましたが)通信キャリアを超えてメッセージの送受信をする手段として、ケータイEメールが普及していきました。一方で、このメールアドレスが変わってしまうことがネックとなって、MNPの利用もあまり進んでいませんでした。

 しかしながら、昨今のMNP利用者向けの販売インセンティブ大盤振る舞いによって、ついにケータイEメールアドレスの利用をやめたユーザーが増えてきたのでしょう。そしてケータイEメールに代わるコミュニケーション手段として定着していったのが、LINEなどのメッセンジャーです。他にもtwitterやfacebookなど、メッセンジャーとして利用できる手段は多様ですが、やはりわが国で圧倒的にユーザー数が多いものがLINEということで、ケータイEメールの代替に、LINEを標準搭載(プリインストール)したところが、時代の大きな変化だなと驚いていることです。

 “いまさらガラケーなどいらない”というユーザーも多いとは思いますが、スマートフォンのディスプレイが大型化していくなかで、「もしかしてタブレットとガラケーを組み合わせたほうが便利じゃない?!」というふうに考えるユーザーも出てきたようです。筆者の場合も、複数のスマートフォンや音声通話用ガラケーを持ち歩いていますが、スマートフォンでfacebookやマップなどを使っていると、すぐに電池が無くなってしまいます。一方で、ガラケーは電池の持ちがよく、また通話機能の使いやすさも、スマートフォンの比ではありません。意外にも、スマホ(またはタブレット)と、ガラケーの2台持ちは便利なのではと思う昨今です。一度、こうしたAndroid OS搭載ガラケーを体験してみてはいかがでしょうか。

おすすめ記事