シニアへのスマホ普及が急速に進んできたと感じませんか。昨年4月のデータですが、NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によれば60代のスマホ所有率は91%、70代でも70%まで上昇しています。この伸び率で行けば、今春には70代でも80%を超えるのではないでしょうか。
以前は、シニアがまだまだスマホを利用していないからと様々なサービスにおけるデジタル活用において従来の方法と併存させるなどの配慮が求められていたと思います。しかし、それではいつまでたってもデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進まないと頭を抱えていらっしゃった方も少なくないでしょう。
DXのさらなる推進を目指していくために、じつは全国各地で自治体などを中心にしてシニアへのスマホの活用を支援する取り組みが拡がっています。
たとえば昨年末に飛び込んできたリリースによると、長野県飯綱町では、12月から3月までの間に、3カ所で計18回(各回2日間)もの「シニアのためのスマホ教室」を開催しています。
(参考)飯綱町プレスリリース「シニアのためのスマホ教室(初級編)開催!」
背景としては、本年1月中旬から住民向けアプリ「iなび いいづな」の利用が開始されるとともに、マイナンバーカードの普及によりスマホの利用シーンが今後さらに増加することが考えられることから、自治体としてもシニア層までスマホの普及を進めていきたいという狙いがあります。
この飯綱町の取組みで着目したいのが、地元の長野県北部高等学校の生徒が先生役としてスマホ教室をサポートすることです。スマホを使いこなしているのはやはり「若者」たちです。地元の学生、生徒が地域のシニアにスマホの活用を教えることで、世代を超えた人的交流にもつながっていきます。
じつは筆者もかつて青森公立大学に勤務していた時に、ゼミ生を講師として地元のシニアや小中学生向けにスマホ講座を展開して大変喜ばれました。そうした取組みが全国に拡がってきているのですね。
鳥取県倉吉市では、同様に地元の鳥取看護大学、鳥取短期大学が連携し、学生たちが高齢者向けの「スマホ教室」をサポートしています。学生たちは事前にソフトバンク社員からの研修を受け、倉吉市長から「デジタルリーダー」の任命を受けて講師として活躍しています。市から任命された「デジタルリーダー」というところにモチベーションを向上させ、優しく丁寧な研修につながっているのだそうです。
(参考)鳥取短期大学「デジタルリーダーボランティアとして、地域へ!」
こうした自治体が主導するシニア向け「スマホ教室」の多くは、通信事業者や販売店などが社会貢献活動の一環として実費負担にて協力しています。しかし、通信サービスを提供する企業が前面に立つよりも、これら企業がフォローに入る形にして、地元の若者たちが主体となって展開される「スマホ教室」が根付いていくことが、持続的な地域の発展には欠かせないのかなと感じます。そして、こうした取組みは大都市部よりも、地方で活発に動き出しているのです。