規制緩和される電動キックボード|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

警察庁は、これまで「原付バイク」と同じ扱いとされていた、電動キックボードについて、時速20キロ以下で走行するものであれば、16歳以上の場合、運転免許を不要とするといった道交法の改正を検討していると一部のメディアが12月23日に報道しました。

電動キックボードをどういうカテゴリの乗り物に分類するかで色々と議論が行われてきましたが、2021年4月23日には産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」を使って電動キックボードの道路交通法上の扱いを小型特殊自動車扱いとすることで、最高速度が15km/hに制限される一方でヘルメット着用を任意とさせた公道での実証実験なども行われています。これは6月14日に公開したこちらのコラムでも紹介しています。

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世界では手軽な乗り物として、またライドシェアなどの形で観光地などでも使われてきた電動キックボード。その後日本でも道路運送車両法の保安基準に合致させて原付バイク(第一種原動機付自転車)として登録可能な電動キックボードが販売されるようになり、新しもの好きの筆者も早々に飛びつきました。

筆者が所持しているものは、シンガポールのFalcon PEV製「ZERO9」で、SWALLOW合同会社が輸入し日本の保安基準を満たすための装備を装着して販売しています。
筆者は発表早々に予約し、2019年末に納車され、2020年1月に新規登録しました。

こちらが筆者所有のZERO9
こちらが筆者所有のZERO9
第一種原付のナンバーが付きます
第一種原付のナンバーが付きます

日本の保安基準を満たすため、海外で販売されるオリジナル仕様に加え、サイドミラー、ウインカー、ブレーキライト、ナンバー取付フレーム、ナンバー灯、ホーンなどが増設されています。

ヘッドライトを点灯
ヘッドライトを点灯
ブレーキライト等も必須
ブレーキライト等も必須

日本の法令で第一種原付では法定速度は30km/hに定められています。でも性能的には余裕があるようで、私有地内の車道で走行したところ、正直なところ50km/hぐらいは加速するようです。


こんな感じでひゅるひゅると走れます

ただ、正直なところ車輪径が小さいので、小さな障害物でもつまづきそうな感じです。ですので法定速度30km/hで十分であると思います。また、不安定な乗り物ですし、スピードは出せませんので、この電動キックボードで複数の車線がある幹線道路など恐ろしくて走ろうとは思いません。
筆者の場合は、住宅街などの車や人通りの少ないところの走行を前提に、コンビニなどへの買い出しに行くときの専用車両といった使い方でしょうか。

筆者の所有する電動キックボードの場合、原付バイクと同じで原付免許または普通免許の所持が必要となり、走行するのは左側通行の車道のみで歩道は通行できませんし、ヘルメットの着用義務もあります。車体は当然、道路運送車両法の保安基準に合致していて、自動車損害賠償責任保険に加入しなくてはなりません。また区市町村税である軽自動車税の納付義務があり、自治体より交付されるナンバープレートを取り付けています。

ところが、昨今はナンバーのついていない無法な電動キックボードも頻繁に見かけるようになってきました。
ひどい事例では横断歩道や歩道を猛スピードで走っていたりして、歩行者との接触も心配です。案の定、警視庁によると2021年は11月末までに電動キックボードが関係する事故が60件発生し、16人が負傷しているとのことです。

こんな状況であれば、むしろ規制を強化すべきではないかとの論調も出てきて当然です。しかし、今回提出される道路交通法改正案は逆の方針を示しています。

規制緩和の背景には、欧米における電動キックボードのシェアリング事業なども参考に、日本でも新産業の創出につなげられないかという期待がありました。このため交通、車両規定、事業化の観点から、内閣府、警察庁、国土交通省、経済産業省などで多角的な議論が進められてきました。

警察庁は「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」を2020年7月から2021年11月まで計9回にわたり開催し、最終報告書を提示しています。この検討会では、電動キックボードのみならず、電動車いす、自動配送ロボット、超小型モビリティ、自転車なども含まれます。

新たな交通ルール(車両区分)の大枠として、「一定の大きさ以下の電動モビリティは、最高速度に応じて3類型に分ける」としています。

新たな交通ルール(車両区分) 出典:警察庁「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会報告書概要」令和3年12月
新たな交通ルール(車両区分) 出典:警察庁「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会報告書概要」令和3年12月

今回話題としている電動キックボードの規制緩和は、この「小型低速車」に類型されるところのものになります。
免許の対応については、同検討会の中間報告書の中に海外制度に関する調査内容があり、例えばドイツでは運転免許不要・年齢制限14歳、フランスでは運転免許不要・年齢制限12歳などとなっており、日本も準じるべきとしたのでしょう。

免許やヘルメット着用義務が免除される代わりにそうした小型低速車の制限速度が20km/h以下と定められました。規制を強化すべきとの意見もありますが、筆者としては車両の基準や走行帯も明確化され、それによって法令を守らずに走っている無法な電動キックボードを取り締まれるようになるので、むしろ歓迎すべき法改正と見るべきではないかと思いました。あ、第一種原付ではない低速電動キックボードも買っちゃおうかしら。

<参考>
警察庁:多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html

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