総務省が通信料金等をめぐるアクションプランを公表|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン[概要]

一昨年、菅官房長官(当時)が「携帯電話の料金は不透明で、他国に比べ、高すぎる。4割程度は下げられる余地がある」と発言し、その後有識者会議などで議論が進んで昨年10月には、通信料金と端末代金の完全分離や行き過ぎた囲い込みの禁止等を内容とする電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号。以下「改正法」という。)が施行されるなど、総務省はその着実な執行を進めてきました。

ちなみに昨年の電気通信事業法の一部改正で、回線契約を伴う端末販売時の値引きは大きく制限され、一部のユーザーからはスマホが購入しづらくなったとの声も上がりました。しかし、頻繁に端末を買い替えるユーザーばかり得をする売り方は不公平感も強く、筆者としてはこの施策は好意的に受け止めています。
実際に端末販売に関しては、中・低価格ながら高品質高性能なスマホラインアップが充実してくるなど、各通信キャリアや端末メーカーの工夫も見られるようになり、端末だけを気軽に買い替えて楽しめるようになりました。

一方、通信料金に関しては、まだまだ高いと感じているユーザーも少なくなさそうです。
そうした中で菅政権が発足し、携帯電話料金の引き下げに改めて言及しました。
これを受け総務省は10月27日に、モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けて今後取り組むべき事項をまとめた「アクション・プラン」を公表しました。

このアクションプランでは、今後の取り組みに関し「分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現」「事業者間の公正な競争の促進」「事業者間の乗換えの円滑化」を3本の柱として、柱ごとの施策を示しています。
具体的な取り組みとして、電気通信事業法の一部を改正する法律(改正電気通信事業法)の着実な執行へ向けた四半期ごとの進捗管理や、データ接続料・音声卸料金の低廉化、MNP時のキャリアメールの引き継ぎの実現、eSIMの促進にむけた指針の公表などを盛り込んでいます。

モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン[概要]
<図:総務省概要>モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン

通信業界側関係者からは政権側からの押し付けで料金引き下げを押し付けられることに様々な意見も出ているようですが、筆者はやはりユーザーの利用実態に応じて通信料金のあり方は随時見直すべきだと考えています。
たとえばデータ通信量を基準に従量制とした現在の料金プランは2014年から始まりました。それ以前は基本使用料をベースに通話料は従量制、データ通信はパケット定額が主流だったわけです。ユーザーがガラケーからスマホに移行する中で、データ通信量が飛躍的に増大し、そのため利用するデータ量を従量制にすることで、ユーザーからの収益を確保しようと大きく料金プランの設計が見直されたことになります。その後もスマホのデータ通信は増え続ける一方で、20GB、30GBといった大容量に対応した料金区分が追加されるなどしてきました。

その後も、4G LTEの通信速度は向上をし続け、ユーザーのスマホ利用でも動画の活用が主体となり、利用するデータ通信量は増える一方です。そうした中で、データ通信量当たりの単価は利用実態に応じて見直されるべきだと考えています。

ところで、日本のデータ通信速度は果たして満足のいくものといえるのでしょうか。
確かに4G LTEがスタートした直後にアメリカやヨーロッパなどでの利用と比べると、日本の通信インフラは非常に高品質で、通信速度に関してもどの国々よりも高速で安定していた印象があります。
ところが、通信速度チェックで定番となっている「SPEEDTEST」(https://www.speedtest.net/)が公表した世界の速度調査結果(2020年9月)を見ると、1位は韓国、2位中国、3位UAE、4位カタール、と来て、日本は58位ととても残念な結果でした。もちろん通信環境は国それぞれ色々な事情がありますから、簡単には比較できませんし、日本の通信速度は実用には十分耐えられるものなのですが、おそらく他国の通信品質が飛躍的に向上してきたととらえるべきなのでしょうか。

SPEEDTEST:Speedtest Global Index
https://www.speedtest.net/global-index

日本の通信品質は一時は世界最高レベルの高速大容量通信を誇っていたものの、それに満足してしまって積極的な品質改善を怠ってきたのではないかとも感じます。

進化が止まっているとはいいません。5Gもスタートしていますし、常に前進を続けていることは承知しています。しかし、進化のスピードが世界の足並みから取り残されていないでしょうか。
通信料金の話に戻すと、これまでも10年程度に一度程度総務省から突かれてやむなく実態を見直して値下げを行うということを繰り返してきました。通信インフラや通信サービスはもちろんわが国でも着々と進化を続けていますが、通信料金も利用実態に照らし合わせて進化が必要と感じています。

総務省「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban03_02000673.html

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