さる7月15日より、青森市のタクシー会社である文化タクシーが、車両に無料Wi-Fiおよび多言語電話通訳サービスを備えたとの案内をいただきましたので、さっそく装備を拝見してきました!
モバイルWi-Fiルータをタクシーに搭載
一般的に、バスやタクシーで利用可能なWi-Fiサービスというのは、携帯電話ネットワークに接続するモバイルWi-Fiルーターを設置することで実現させます。文化タクシーの場合はNTTドコモの「Wi-Fi STATION HW-02G」を車載していました。
とはいえ、その端末費用や通信料といったコストが発生するわけで、乗客向けサービスの一環とはいっても、必ずしも収益が潤沢とはいえない地方都市のタクシー会社にとってはその負担は少なくないわけです。これが地方で交通機関等のICT対応が遅れている要因でもあります。
では今回の文化タクシーの場合、どうやってこれを実現させたのでしょうか。じつはこのサービスは、文化タクシーのほか、青森市のICT企業である株式会社リンクステーションと、NTTドコモ東北支社のコラボレーションによってサービス提供が可能になりました。モバイルWi-Fiルーターの端末費用はNTTドコモ東北支社が負担(その後の通信料収入があるわけですから)、毎月かかる運用費はリンクステーションが持つそうです。
リンクステーションは全国のセブンイレブンに配備されているチケット予約・発券システムを提供している企業なのですが、そのほかに青森県の地域情報サイト「ポみっと!」の運営も行っています。「ポみっと!」はグルメやショッピングなどの店舗情報を満載したサイトで、いわば「ホットペッパー」などのタウンガイドの青森ローカル版といったようなサービスです。青森県民には比較的知られたものとなっています。
文化タクシーに装備された無料Wi-Fiはその名称が「ポみっと!フリーWi-Fi」と名付けられています。なるほど、乗客にはこうしたところで「ポみっと!」の認知度を上げていこうという戦略ですね。しかも、この車内Wi-Fiに接続してブラウザを開くと、最初に「ポみっと!」のトップページが表示されるようになっています。リンクステーションにとっては宣伝という扱いで、この文化タクシーに通信サービスを提供しているということなのですね。ちなみにタクシー車体にも「ポみっと!」の広告が描かれています。
さっそく無料Wi-Fiの実力を試させていただきました。そもそもHW-02Gは下り最速262.5Mbpsの高速データ通信が可能なモバイルWi-Fiルーターです。これにスマホを接続して速度チェックをしてみたところ、下りで30bps以上出ていますね。
インバウンド向け翻訳サービスは3者通話で実現
じつは、青森市は意外にも外国人観光客がたくさん訪れる街です。というのは青森市はかつての青函連絡船に代表されるように、港を中心に発展した街であり、今もその港には世界中から大型観光客船が寄港します。外国客船が着岸している日は、青森市中心商店街は外国人をたくさん見かけます。
今回、文化タクシーが無料Wi-Fiを搭載したのはこうしたインバウンド観光客を意識したものなのですが、この場合Wi-Fiだけでなく、多言語に対応したガイドも必要となりますね。とはいえ、乗務員が対応できる言語には限りがあります。
そこで、10カ国語に対応する電話通訳サービスと契約を結び、外国人観光客と会話する際は通訳を介した3者通話によってコミュニケーションが取れるよう、必要な設備を搭載しました。
電話通訳サービスに接続するためのタブレット端末を運転席に搭載、乗務員はこれを使ってハンズフリー通話を行います。一方、客席のほうにもマイクとスピーカーを装着し、乗客がマイクを通じて話しかけると、電話の先にいる通訳が翻訳し、その声が乗務員の端末に聞こえるという形でコミュニケーションします。
今回、文化タクシーが導入した無料Wi-Fiおよび多言語電話通訳サービスを装備したタクシーは全10台。まだまだ始まったばかりですが、こうした取り組みが他のタクシー会社にも広がり、増車していくことを期待したいですね。
余談ですが、文化タクシーが導入したワゴンタクシー・日産NV200は、ガソリンとLPGのバイフューエルシステムを搭載しているそうで、荷室にはLPGタンクが備えられていました。LPG注入口には自動車チューニング用アフターパーツメーカーとして知られる「HKS」のロゴが。調べてみると、このガソリンとLPGの倍フューエルシステムはHKS製なんですって。HKSって、そんな事業もやっていたんですね。